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Y's Letter
感染対策情報レター
2013/04/25

感染症予防法の改正について(重症熱性血小板減少症候群(SFTS)、侵襲性インフルエンザ菌感染症、侵襲性髄膜炎菌感染症、侵襲性肺炎球菌感染症の追加)


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Y’s Letter Vol.3 No.26
Published online 2013.04.25


(2018.11.26追記)
*ご注意ください:本内容は最新の感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律の情報ではありません。届出等に関する情報は 厚生労働省のホームページを参照ください。

はじめに

2013年3月4日及び2013年4月1日に感染症予防法の一部改正が施行されました。 1)2)。以下、改正内容及び追加された疾病について述べます。

改正内容

2013年3月4日施行
感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律施行令関連1)

  • 「重症熱性血小板減少症候群(病原体がフレボウイルス属SFTSウイルスであるものに限る。)」が4類感染症に追加された。
  • フレボウイルス属SFTSウイルスが3種病原体等に追加された。

2013年4月1日施行
感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律施行規則関連2)

  • 侵襲性インフルエンザ菌感染症、侵襲性髄膜炎菌感染症、侵襲性肺炎球菌感染症が5類感染症(全数把握)に追加された。
  • これらの疾病と重複を避けるため細菌性髄膜炎から、侵襲性インフルエンザ菌感染症、侵襲性髄膜炎菌感染症、侵襲性肺炎球菌感染症疾病を除くとともに、髄膜炎菌性髄膜炎が削除された。
  • 細菌性髄膜炎については引き続き定点把握対象疾患のままとされた。

追加された感染症の概要

1.重症熱性血小板減少症候群(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome:SFTS) SFTSウイルスによって引き起こされる感染症です。SFTSウイルスは1本鎖RNA、エンベロープを有する新規のウイルスで、ブニヤウイルス科フレボウイルス属に属します3)。同科に属するウイルスとしてはクリミア・コンゴ出血熱を引き起こすクリミア・コンゴ出血熱ウイルスやリフトバレー熱を引き起こすリフトバレーウイルス、腎症候性出血熱やハンタウイルス症候群を引き起こすハンタウイルスが知られています。臨床症状は6日~2週間の潜伏期の後、発熱、倦怠感、食欲低下、消化器症状(腹痛、嘔吐、下痢等)、リンパ節腫脹、出血症状がみられます3)4)5)。致死率は中国において2009年では30%程度であり3)、現在では調査が進み10数%程度になっています5)。臨床検査では、共通して血小板減少、白血球減少、血清電解質異常(低Na血症、低Ca血症)、血清酵素異常(AST、ALT、LDH、CK上昇)、尿検査異常(タンパク尿、血尿)が認められ、血液等からのウイルスの分離・同定、PCR法による遺伝子の検査、ELISA法又は蛍光抗体法による抗体の検出等を実施し病原を特定します3)4)5)。治療は有効な抗ウイルス薬がないため、対症療法が主体です。 感染経路については牛、水牛、ヤギ等の家畜に寄生したフタトゲチマダニ(Haemaphysalis longicornis )、オウシマダニ(Rhipicephalus microplus )からフレボウイルス属が検出されていることが報告されているため6)、これらのマダニを媒介して感染すると考えられています。しかし一方で、ダニ媒介のみならず、中国では血液を介したヒトーヒト間による接触感染症例も報告されています7)8)9)。報告によると医療機関内でのヒトーヒト間の感染伝播の原因として、個人防護具を装着しなかったことが挙げられており7)8)、ある感染伝播事例では感染患者の蘇生術における気管挿管時に、手術時と同様の個人防護具は着用していたものの、フェイスシールドやゴーグルを着用していなかったため、保護してない皮膚や粘膜に血液が飛び散り感染した疑いが示唆されています7)。 これらのことから感染予防としてはダニ媒介経路と血液媒介経路を遮断することが重要です。マダニは森林、山等の野外に生息するため、森林・山等では長袖の服、長ズボンを着用し肌が露出しないようにし、家畜にマダニが寄生することから家畜と接する際にも同様に注意することが重要です。 医療機関においては血液媒介を防止するため標準予防策を遵守し、さらに下血を含む便や下痢等の消化器症状を呈することから接触予防策を追加した対策を実施します10)。消毒はエンベロープの有るウイルスのため高水準消毒薬(グルタラール、フタラール、過酢酸)、中水準消毒薬(次亜塩素酸ナトリウム、ポビドンヨード、アルコールなど)、熱水消毒(80℃10分)が有効と考えられます。 日本国内においては、2013年4 月16 日現在、12名(8名死亡、4名回復)のSFTSウイルスによる感染症症例が報告されております11)12)13)14)15)16)17)。内訳は男性が7名 女性が4名、性別不明1名ですべて50歳以上であり、長崎県(2名)11)、広島県(1名)11)、山口県(2名)11)17)、愛媛県(2 名)11)12)14)、高知県(1名)11)、佐賀県(2名)11)13)16)、宮崎県(1名)11)12)、鹿児島県(1名)15)で確認されています。また12 中2名で発症前のダニ咬傷が確認され11)、1名で家族により大腿部にダニが付着していたことが確認されています15)

2.侵襲性インフルエンザ菌感染症 Haemophilus influenzae による侵襲性感染症のうち、本菌が髄液又は血液から検出された感染症と定義されています18)。潜伏期は不明で、突発的に発症し、上気道炎や中耳炎を伴うこともあります。髄膜炎では、頭痛、発熱、髄膜刺激症状、痙攣、意識障害を示し、乳児では大泉門膨隆等の症状を示します。敗血症例では発熱、悪寒、虚脱、発疹を示しますが特異的でなく、急速に重症化して肺炎や喉頭蓋炎またはショックを引き起こすことがあります。 伝播予防策は標準予防策に飛沫予防策を追加します19)。 消毒薬抵抗性については特に報告がありません。通常選択する消毒薬を用いて必要な消毒を行います。 インフルエンザ菌の感染対策については、Y’s Letter No.24「肺炎球菌とインフルエンザ菌」をご参照ください。

3.侵襲性髄膜炎菌感染症     Neisseria meningitidis による侵襲性感染症のうち、本菌が髄液又は血液から検出された感染症と定義されています18)。潜伏期間は2~10日で突発的に発症します。 髄膜炎では、頭痛、発熱、髄膜刺激症状、痙攣、意識障害を示し、乳児では大泉門膨隆等の症状を示します。敗血症例では発熱、悪寒、虚脱、を示します。重症化により紫斑、ショック、DIC(Waterhouse-Friedrichsen症候群)に至ることもあります。特徴としては眼球結膜や口腔粘膜、皮膚に点状出血が、体幹や下肢に出血斑が認められます。 伝播予防策は標準予防策に飛沫予防策を追加して行います19)。 消毒薬抵抗性については特に報告がありません。通常選択する消毒薬を用いて必要な消毒を行います。 髄膜炎菌の感染対策については、Y’s Letter No.33「レンサ球菌・髄膜炎菌・百日咳菌」をご参照ください。

4.侵襲性肺炎球菌感染症 Streptococcus pneumoniaeによる侵襲性感染症のうち、本菌が髄液又は血液から検出された感染症と定義されています18)。 潜伏期間は不明で、主として小児及び高齢者が罹患し、小児と高齢者では臨床的特徴が異なります。小児では、初期症状が発熱のみで、感染巣が明らかでない菌血症例が多く、髄膜炎は直接的に発症するもののほか、中耳炎の続発性として発症することがあります。高齢者では、初期症状として発熱、咳嗽、喀痰、息切れを示し、菌血症を伴う肺炎が多く発症します。髄膜炎例では、頭痛、発熱、痙攣、意識障害、髄膜刺激症状等を示します。 伝播予防策は標準予防策を実施します。肺炎を併発している症例があり、病室内または施設内で伝播のエビデンスがある場合には飛沫予防策を追加します19)。 消毒薬抵抗性については特に報告がありません。通常選択する消毒薬を用いて必要な消毒を行います。 肺炎球菌については、Y’s Letter No.24「肺炎球菌とインフルエンザ菌」をご参照ください。

おわりに

国内において新規のSFTSウイルスによる重症熱性血小板減少症候群が確認され、感染症予防法の一部が改正されました。 SFTSは、医療機関で血液を介した感染症例が報告されており、原因として個人防護具の着用が十分でなかったことが挙げられています。従って、医療機関では常時、標準予防策を遵守し、必要に応じて飛沫予防策、接触予防策、空気予防策を追加することが肝要です。また、新規病原体による感染症のみならず従来の病原体による感染症についても引き続き情報収集や管理体制を整えておくことが必要と思われます。

<参考文献>

  1. 厚生労働省健康局長:
    感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律施行令の一部を改正する政令等の施行について.
    健発0222第2号.平成25年2月22日.
    http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou17/pdf/130225-01.pdf
  2. 厚生労働省健康局長:
    感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律施行規則の一部を改正する省令の施行等について.
    健発0307第1号.平成25年3月7日.
    http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T130307H0010.pdf
  3. Yu XJ, Liang MF, Zhang SY et al.:
    Fever with Thrombocytopenia Associated with a Novel Bunyavirus in China.
    N Engl J Med 2011;364: 1523-1532.
    http://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMoa1010095
  4. Xu.B,Liu X.L ,Huang X.X et al.:
    Metagenomic Analysis of Fever, Thrombocytopenia and Leukopenia Syndrome (FTLS) in Henan Province, China: Discovery of a New Bunyavirus.
    PLoS Pathog2011;7: e1002369.
    http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3219706/pdf/ppat.1002369.pdf
  5. Gai ZT, Zhang Y, Liang MF, et al.:
    Clinical progress and risk factors for death in severe fever with thrombocytopenia syndrome patients.
    J Infect Dis. 2012 ;206 :1095-1102.
    http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22850122
  6. Zhang YZ, Zhou DJ, Qin XC, et al.:
    The ecology, genetic diversity, and phylogeny of Huaiyangshan virus in China.
    J Virol. 2012;86:2864-2868.
    http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3302241/pdf/zjv2864.pdf
  7. Zhongtao Gai Z ,Liang M,Zhang Y,et al.:
    Person-to-Person Transmission of Severe Fever With Thrombocytopenia Syndrome Bunyavirus Through Blood Contact.
    Clin Infect Dis. 2012; 54: 249?252.
    http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3245727/pdf/cir776.pdf
  8. Tang X, Wu W, Wang H, et al.:
    Human-to-human transmission of severe fever with thrombocytopenia syndrome bunyavirus through contact with infectious blood.
    J Infect Dis. 2013;207:736-739.
    http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23225899
  9. Bao CJ, Guo XL, Qi X, et al.:
    A family cluster of infections by a newly recognized bunyavirus in eastern China, 2007: further evidence of person-to-person transmission.
    Clin Infect Dis. 2011;53:1208-1214.
    http://cid.oxfordjournals.org/content/53/12/1208.full.pdf+html
  10. 厚生労働省健康局結核感染症課長:
    重症熱性血小板症候群(SFTS)の国内での発生について(情報提供及び協力依頼).
    健感発0130第1号平成25年1月30日.
    http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/dl/20130130-01.pdf (別添1)病原微生物検出情報(IASR)速報 国内で初めて診断された重症熱性血小板減少症候群患者
    (別添2)重症熱性血小板減少症候群について
    (別添3)重症熱性血小板減少症候群に関するQ&A
  11. 国立感染症研究所:
    <速報>国内で確認された重症熱性血小板減少症候群(SFTS)患者8名の概要(2013年3月13日現在)
    IASR  2013.
    http://www.nih.go.jp/niid/ja/sfts/sfts-iasrs/3321-pr3983.html
  12. 国立感染症研究所:
    <速報>国内で初めて確認された重症熱性血小板減少症候群(SFTS)患者に続いて後方視的に確認された2例(2013年3月7日掲載)
    IASR  2013.
    http://www.nih.go.jp/niid/ja/sfts/sfts-iasrs/3298-pr3981.html
  13. 佐賀県:
    プレスリリース マダニによる感染症に注意しましょう~SFTSの患者が確認されました~.
    佐賀県ホームページ
    http://www.pref.saga.lg.jp/web/var/rev0/0123/3426/2013312184346.pdf
  14. 厚生労働省/国立感染症研究所:
    IDWR 感染症発生動向調査 感染症週報.
    2013年第13週(3月25日~3月31日)通巻第15巻13号.
    http://www.nih.go.jp/niid/images/idwr/kanja/idwr2013/idwr2013-13.pdf
  15. 山口県:
    報道発表 「重症熱性血小板減少症候群」の症例確認について.
    平成25年4月16日.
    http://www.pref.yamaguchi.lg.jp/press/201304/024492.html
  16. 厚生労働省:
    別紙 医師及び指定届出機関の管理者が都道府県知事に届け出る基準.
    http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/pdf/01d.pdf
  17. CDC:
    Guideline for Isolation Precautions: Preventing Transmission of Infectious Agents in Healthcare Settings 2007
    http://www.cdc.gov/hicpac/pdf/isolation/Isolation2007.pdf
2013.4.25 Yoshida Pharmaceutical Co.,Ltd.

関連サイト