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Y's Letter
感染対策情報レター
2015/04/07

感染症予防法の一部改正について(2014年11月21日公布)


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(2018.11.26追記)
*ご注意ください:本内容は最新の感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律の情報ではありません。届出等に関する情報は 厚生労働省のホームページを参照ください。

はじめに

2014年9月に公布・施行された、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(以下感染症予防法)施行規則の一部改正1)に続き、11月21日に、感染症予防法の一部を改正する法律が公布されました2)。本法律は2016年4月1日を最終的な施行日として、改正内容別に段階的な施行日が設けられています。現段階では、法律に新たに盛り込まれる省令の内容が定まっていない状況ですが、今回は改正法施行に向けて厚生科学審議会で審議中の内容も踏まえて改正の概要に触れ、類型に新たに追加される感染症について述べます。

改正の概要

○感染症の類型

  • 二類感染症に中東呼吸器症候群(Middle East Respiratory Syndrome(MERS))(病原体がベータコロナウイルス属MERSコロナウイルスであるものに限る)を追加する。
  • 二類感染症である鳥インフルエンザについて、インフルエンザウイルスA属インフルエンザAウイルスであって、新型インフルエンザ等感染症の病原体に変異するおそれの高い血清亜型を政令で定めることとする(特定鳥インフルエンザ)。
  • 施行日は公布日から二月を経過した日(2015年1月21日)。

二類感染症である鳥インフルエンザについて、政令3)では、これまで法律で定められていたH5N1に加え、H7N9を定めることとしています。
新たに類型に加わる感染症については後に詳述します。

○病原体等の類型

  • 三種病原体等である結核菌について、薬剤耐性に係る記述を「イソニコチン酸ヒドラジド、リファンピシンその他結核の治療に使用される薬剤として政令で定めるもの」とする。
  • 四種病原体等であるインフルエンザウイルスA属インフルエンザAウイルスについて、血清亜型を政令で定めることとする。
  • 施行日は、結核菌についての改正は公布日から六月を経過した日(2015年5月21日)、インフルエンザウイルスについての改正は公布日から二月を経過した日(2015年1月21日)。

政令3)では、三種病原体等の結核菌が耐性を有する「その他結核の治療に使用される」薬剤として、フルオロキノロン系及びカナマイシン等の薬剤を定めること、四種病原体等のインフルエンザA属インフルエンザAウイルスの血清亜型として、これまで法律で定められていたH2N2、H5N1およびH7N7に加え、H7N9を定めることとしています。

○医師の届出

  • 直ちに届出する感染症に、厚生労働省令で定める五類感染症を追加する。
  • 施行日は公布日から六月を経過した日(2015年5月21日)。

これまで五類感染症の一部について、個人が特定できない形式で7日間以内に届け出ることとされていましたが、感染拡大防止策を的確に講じるべき五類感染症については、一類感染症などと同様、氏名・住所等を含む情報を直ちに届け出るのが適当であるとされています。厚生科学審議会では、省令で定めるべき五類感染症として侵襲性髄膜炎菌感染症と麻しんを挙げています4)

○獣医師等の届出

  • 獣医師等の届出の対象から、実験のために届出の対象である感染症に感染させられている場合を除く。
  • 公布日から施行。

感染症予防法では、エボラ出血熱、マールブルグ病、その他政令で定める感染症を人に感染させるおそれが高いものとして政令で定める動物について、その動物が当該感染症にかかり、又はかかっている疑いがあると診断したとき、獣医師(診断を受けない場合は動物の所有者)は所定事項を、保健所長を経由して都道府県知事に届け出ることが定められていますが、実験動物についてはこの規定から除外されます。

○感染症の発生の状況及び動向の把握

  • 都道府県知事が、開設者の同意を得て、厚生労働省令で定める五類感染症患者の検体又は病原体の提出を担当させる施設を指定する。
  • 施行日は2016年4月1日。

五類感染症のうち、対策を講じるにあたって遺伝子型、血清型などの解析が特に重要なものについて、指定した医療機関や衛生検査所から検体等の提出を行うことを定めています。厚生科学審議会では、省令で定めるべき五類感染症として季節性インフルエンザを挙げています4)

○感染症の発生の状況、動向及び原因の調査

  • 都道府県知事(緊急時は厚生労働大臣)が必要であると認めるとき、当該職員に感染症予防法に規定する感染症についての必要な調査として、当該検体の提出を求めさせる、もしくは採取を求めさせることができるものとする。
  • 施行日は2016年4月1日。

これまで感染症予防法には、感染症についての必要な調査として検体の提出や採取が明記されていませんでした。今回の改正により、法律に規定する全ての感染症について検体の提出・採取を要請できることが明文化されます。

○検体の採取等

  • 都道府県知事(緊急時は厚生労働大臣)が一類感染症、二類感染症、新型インフルエンザ等感染症または新感染症のまん延防止のため必要であると認めるとき、当該検体の提出もしくは検体の採取に応じるよう勧告できるものとし、勧告を受けたものが従わないときは、当該職員に必要最小限度の検体の採取や、検体を無償で収去させることができるものとする。
  • 施行日は2016年4月1日。

 一類感染症、二類感染症、新型インフルエンザ等感染症、新感染症の検体については、検体の提出・採取の要請を受けたものがそれに応じないとき、強制的に検体の採取や収去できることが規定されます。

○結核

  • 保健所長は、結核登録票に登録されている者について、必要と認めるときは医療機関、その他厚生労働省令で定めるものに対して、服薬指導等の実施を依頼できる。
  • 施行日は公布日から六月を経過した日(2015年5月21日)。

新たに追加される感染症

○中東呼吸器症候群(MERS)
中東呼吸器症候群は、新種のコロナウイルスによる感染症として2012年6月にサウジアラビアの症例で初めて確認5)(後に2012年3月のヨルダンでの症例検体からも確認)されて以来、主にアラビア半島での感染例が継続的に報告されています6)。感染しても無症状で経過する場合もありますが、有症者では発熱、悪寒、頭痛、咳、咽頭痛、筋肉痛、呼吸困難などの症状があり、肺炎や腎障害が進行して死亡に至る場合もあります7)8)。2014年6月時点で感染が確認されたのが699例、そのうち少なくとも209例が死亡しています9)。ウイルスは2013年5月にMERSコロナウイルスと命名され、欧米などにおいても中東地域居住者が現地で感染後に渡航して発症、あるいは中東地域を旅行中に感染・発症した患者が帰国し、その家族が発症した例などが報告されていますが10)11)、これまでのところ日本国内での感染例はありません。ヒトへの感染源となる動物はヒトコブラクダの可能性が高いとされています12)。2次的なヒト-ヒト感染も起こりますが、それらは家族や、患者をケアした医療従事者などであり、連続的な感染はみられないことから7)8)10)11)、本ウイルスは飛沫や接触による限定的な伝播をするものと考えられます。
本感染症は2014年7月より政令によって指定感染症に指定され13)、二類感染症相当の扱いがなされてきましたが、今回の改正で正式に二類感染症として規定されることになります。
消毒薬感受性についてMERSコロナウイルスを用いた検討は行われていませんが、類縁ウイルスにおいて検討が行われています。コロナウイルスはエンベロープを有するウイルスであり、一般的なかぜ症状を呈するコロナウイルス229Eを用いた検討では、1000ppm次亜塩素酸ナトリウム、10%ポビドンヨード、70%エタノール(重量パーセント。約77vol%に相当)、2.0%グルタラール、それぞれ1分間の接触により99.9%以上の不活性化がみられています14)。また2002年から2003年にかけての世界的な流行が大きな問題となった重症急性呼吸器症候群(SARS: Severe Acute Respiratory Syndrome)の原因ウイルスであるSARSコロナウイルスを用いた検討では、80%、85%、95%のエタノール(全て重量パーセント。約85.5vol%、89.5vol%、96.8vol%に相当)を含有する手指消毒薬ではそれぞれ30秒以内で感染力の検出下限に達し、ベンザルコニウム塩化物と界面活性剤を配合した環境消毒薬などでは30分以内で検出下限に達したとされています15)。これらのことから、MERSコロナウイルスも消毒薬の感受性は良好と推察されます。国立感染症研究所は環境消毒に使用する消毒薬として、消毒用エタノール、70vol%イソプロパノール、0.05~0.5w/v%(500~5000ppm)次亜塩素酸ナトリウム等を推奨しています16)

○鳥インフルエンザ(H7N9)

H7N9型の鳥インフルエンザによるヒトの感染例は、2013年2月に中国で初めて確認され17)、同年4月にかけて相次いで症例報告があり、以降は散発的な発生に落ち着きました。しかし2013年から2014年にかけた冬季をピークとして春季まで再び継続的に症例が報告されています18)。これまでの発生地域は中国本土がほとんどであり、台湾、香港、マレーシア、カナダなどでの症例も中国本土に滞在中に感染したものと考えられています19)20)21)22)。確定例である入院患者111例の臨床所見をまとめた文献によると、症状としては発熱、咳が最もよく観察され、97.3%の症例には肺炎がみられています。その他リンパ球減少や血小板減少も高い頻度であったとされています23)。2015年1月時点でWHOに報告されている確定例は486例、そのうち死亡例が185例です。一方で、感染しても無症状もしくは軽症で経過する場合もあり24)、把握されていない症例が一定数存在することが示唆されています。感染には生きた家禽類を扱う市場が主に関わっていると考えられていますが、感染した家禽類は無症状であるため、速やかな感染源の特定は困難です。ヒトへの感染がみられた地域の市場を閉鎖することで新たな症例の発生がみられなくなった例があります25)。また家禽類から感染した初発感染者からのヒト-ヒト感染と考えられる事例も報告されていますが26)27)、家族間に限定されたものであり、これまで連続的な感染はみられていません。感染経路は飛沫への曝露や、飛沫により高度に汚染された環境表面との接触などによると考えられます。
本感染症は2013年4月より政令によって指定感染症に指定され28)、二類感染症相当の扱いがなされ、翌2014年の政令改正29)により、その指定がさらに1年間延長されていました。今回の改正で正式に二類感染症に規定されます。
消毒薬の使用について、インフルエンザウイルスはエンベロープを有するウイルスであることから、従来どおりアルコールや次亜塩素酸ナトリウムに対して良好な感受性をもつと考えられます。国立感染症研究所は環境消毒に使用する消毒薬として、消毒用エタノール、70vol%イソプロパノール、0.05~0.5w/v%(500~5000ppm)次亜塩素酸ナトリウム等を推奨しています16)。(インフルエンザウイルスの消毒法等については Y’s Letter No.9 インフルエンザについてY’s Letter No.27 高病原性トリインフルエンザについてもご参照ください。)

おわりに

類型に追加された感染症の流行は、現在のところ海外の特定の国・地域に限られたものですが、流行地からの持ち込みや重篤化した場合のリスク、ウイルスの変異による急速な感染拡大の可能性など、最新情報の把握や監視体制の整備は不可欠です。また一類感染症など、感染例発生時の迅速な情報収集が特に重要である感染症について、確実に検体および病原体が入手できるよう整備された今回の改正は、今後の感染予防の質向上に大いに資するものと思われます。

<参考文献>

  1. 厚生労働省令第103号.
    平成26年9月9日
  2. 法律第115号.
    平成26年11月21日.
  3. 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備に関する政令.
    平成27年1月9日.
  4. 第5回 厚生科学審議会感染症部会公開資料.
    平成26年6月20日.
    http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000048811.pdf
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Yoshida Pharmaceutical Co Ltd: 2015.4.7

関連サイト