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Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Vol.21 No.2 2016

3種の手指乾燥法によるウイルス分散の比較評価

Kimmitt PT and Redway KF
Evaluation of the potential for virus dispersal during hand drying:a comparison of three methods.
J Appl Microbiol 2016;120:478-486.

手指衛生は病原微生物伝播を減少する方策として重要である。手指衛生にはアルコール含有消毒剤の使用や、石けんと流水による手洗いとその後の乾燥がある。不適切な手洗い後の手指乾燥により、微生物の分散や汚染の危険性がある。本研究では、MS2バクテリオファージモデルを用いて、3種の手指乾燥法(ペーパータオル、温風乾燥機、ジェット乾燥機)を、使用時の環境へのウイルス分散と汚染を比較した。
被験者は手袋を着用し、MS2バクテリオファージ懸濁液で手をすすぎ、3つの手指乾燥法のいずれかを用いて10秒間乾燥させ、乾燥装置の周辺環境と空気中のMS2量を測定した。乾燥装置から0.4mの距離に、床からの高さが異なる6カ所(0.15~1.65m)に培地を設置した調査では、ジェット乾燥機は平均で温風乾燥機の60倍以上、ペーパータオルの1,300倍以上分散した(p<0.0001)。ジェット乾燥機では、高さが0.75mと1.05m付近(小児の顔の高さ)に多く検出された(全体の約70%)。また、高さ0.71mで、乾燥装置から0~3mの距離の9カ所の調査においても、ジェット乾燥機は平均で温風乾燥機の20倍以上、ペーパータオルの190倍以上分散させていた(p<0.01)。ジェット乾燥機で最も多く検出されたのは0.25mの距離であり、乾燥機から離れるに従って減少した。また、使用後15分間の各装置の周りの3カ所の空気検査では、ジェット乾燥機は温風乾燥機の50倍以上、ペーパータオルの100倍以上分散していた(p<0.001)。全ての乾燥装置で、装置からの距離が0.1mと1mの空気を比較すると、近い方が多く検出される傾向にあり、時間経過に従って減少した。
以上の結果より、ジェット乾燥機は温風乾燥機やペーパータオルに比べ、MS2バクテリオファージで人工的に汚染した手指からの分散が有意に多いことが示された。ペーパータオルは水分を吸収し、温風乾燥機は主に蒸発乾燥させ、ジェット乾燥機は空気中に分散させる。さらに、温風乾燥機では空気は主に下向きに移動するが、ジェット乾燥機は600 kph以上の速度があり、装置の横への空気移動がある。手指乾燥装置の選択は、感染制御が重要視される医療現場や食品産業では注意深く検討すべきである。

(訳:豊口禎子)

Carlisle Vol.21 No.2 p7-9 2016

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