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Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Vol.21 No.3 2016

韓国におけるMERSコロナウイルスアウトブレイク時の環境汚染とMERS患者のウイルス排出

Bin SY, Heo JY, Song MS, et al.
Environmental Contamination and Viral Shedding in MERS Patients During MERS-CoV Outbreak in South Korea.
Clin Infect Dis 2016;62:755-760.

中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)は、2012年にサウジアラビアで肺炎により死亡した患者から初めて分離された。サウジアラビアでは医療関連アウトブレイクが報告されているが、韓国においても2015年5月20日に最初のMERS-CoVアウトブレイクが発生している。本研究では、韓国の医療機関におけるMERS-CoVの環境汚染と、MERS患者におけるウイルス排出期間を調査した。
2015年6月8日~7月3日に韓国の2つの病院に入院した4人のMERS患者(年齢中央値68歳、女性)を対象とした。1つの病院の3病室での換気回数は12回/時間、病室と前室の平均差圧は9.1 hPa、他院の1病室は換気回数24回/時間、平均差圧は2.5 hPaであった。
調査した4人の肺炎患者のうち3人で、喀痰中MERS-CoVは発症後18日~25日まで検出された。環境汚染調査では、MERS-CoV RNAはベッドコントローラー(陽性率33.3%)、点滴スタンド(35.7%)、前室机(42.8%)、ベッド柵(26.7%)、医療器具(体温計20%)、X線装置(20%)、換気装置(16.7%)等で陽性であった。環境のMERS-CoV RNAは、患者検体が最後にPCR陽性であったときから2~5日後まで検出された。さらにMERS-CoVはベッドシーツ(陽性率6.7%)、ベッド柵(6.7%)、点滴スタンド(14.3%)、前室机(14.3%)等から検出された。
MERS-CoVは患者や医療従事者が触れる多くの場所から検出され、汚染された環境や媒介物を介して伝播することが示唆された。また、患者が入らない前室からも検出されたことより、医療従事者による汚染が考えられた。さらに、MERS-CoVは臨床的に回復した患者の気道分泌物からも検出された。これらのことより、厳密な環境衛生の実施と、臨床症状のみによる判断より検査結果に基づいた隔離期間が必要なことが示唆された。

(訳:豊口禎子)

Carlisle Vol.21 No.3 p8-10 2016

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