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Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Vol.21 No.3 2016

シンガポールの急性期一般病院で発生したNDM-1産生 Enterobacter cloacaeのアウトブレイク

Ho HJ, Toh CY, Ang B, et al.
Outbreak of New Delhi metallo-β-lactamase-1-producing Enterobacter cloacae in an acute care hospital general ward in Singapore.
Am J Infect Control 2016;44:177-182.

2011年以来、シンガポールでNew Delhi metallo-β-lactamase-1(NDM-1)産生Enterobacter cloacaeE. cloacae)による国内感染が報告されているが、病院感染の発生報告はされていない。今回、急性期病院の成人一般病棟で NDM-1産生E. cloacaeのアウトブレイクを経験したので報告する。
 2014年5月28日にシンガポールにある1,500床の急性期病院のMRSA保菌患者を集団隔離している一般病棟(37床)において、入院中の患者(患者A)の尿培養検体より、NDM-1産生E. cloacaeが検出された。患者Aはすぐに隔離され、病室の最終清掃では、ベッド柵、マットレス、ベッドサイドロッカー、テーブル、スイッチ、備品などが0.5%ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム製剤で清拭され、カーテン交換も行われた。感染対策チーム(ICT)は感染の可能性のあるすべての患者についてスクリーニング検査を実施し、接触予防策を強化するよう医療スタッフに通達した。対象者は、2014年5月12日(患者Aの尿培養で NDM-1産生E. cloacaeが確認されていない最後の日)から、5月28日(患者Aが隔離された日)までに当該病棟に入院したすべての患者とし、この間の退院患者と転棟した患者は追跡調査された。検体は直腸擦過検体または便検体で、検体を培養した結果、イミペネムまたはメロペネムに非感受性を示したエンテロバクター属が分離された場合には遺伝子検査も行われた。
 結果、実施したスクリーニングは55検体のうち、新たに3検体がNDM-1産生E. cloacae陽性と判明し、遺伝子検査の結果、患者Aの検体と類似パターンを示した。この調査に関連する患者56名のうち16名はY医師率いる一般内科チームが担当しており、多変量解析の結果、NDM-1産生E. cloacaeの検出に最も関与しているのはY医師率いるチームであることが示唆された(p=0.06%)。
これらより、今回のNDM-1産生E. cloacaeの伝播は、医療スタッフによるものと考えられた。NDM-1産生E. cloacaeのような高度耐性菌の伝播を減少させるため、感染制御の手法の改善が必要であり、特に手指衛生の遵守や病棟の人員配置が重要になる。

(訳:菅原えりさ)

Carlisle Vol.21 No.3 p8-10 2016

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