開催にあたって
小林 寛伊 (東京医療保健大学 学長)
[基調講演] 病院感染制御に関する総論―最新のガイドライン―
大久保 憲(東京医療保健大学 医療情報学科感染制御学 教授)
手術時手洗いに滅菌水は不要通知後の各施設における取り組み 2005年2月1日医療法施行規則の一部改正と、それに伴う古い厚生労働省の通知が見直された。そこで見直された項目に関するその後の取り組みについて、全国に1,616施設ある300床以上の病院を対象に、2005年7月28日より1カ月間アンケート調査を行ったところ、775施設(48.0%)から回答が得られた。
手術時の手洗い水については、図1に示す回答が得られた。滅菌水を継続して使用し続けるという294施設に、その理由について尋ねたところ、「滅菌水の必要性を主張する人がいる」が22.1%、「水道水に変更する必要性を見出せない」が10.2%であった。「水道水に変更しても問題ないことを知らなかった」という施設もある。
手術時の手洗い方法については、図2に示す回答が得られた。米国でも速乾性手指消毒薬によるラビング法のみの手洗いを行っている施設は約20%である。ブラッシングしている610施設に、スクラブの範囲を尋ねると、「肘の上まで」が65%と圧倒的に多く、「指先のみ」という施設は27%であった。
手術室へ入室するときの着替えについては、「すべて着替えている」が72%と多数で、履物交換についても「すべて履物交換を実施」が71%、「院内靴のみ交換不要」が12%、「靴カバー使用が原則」が2%で、「履物交換は一切なし」は7%であった。
また、術後の手術室の床の清掃方法については「血液など目に見える汚染がある場合のみ局所的に消毒することはあっても、広い領域は消毒しない」とされている。しかし「手術ごとに床消毒を実施」が20.6%で、66.7%の大部分の施設では水拭き清掃を基本としている。
- [特別講演]
肝炎ウイルスに関する概説
小池 和彦(東京大学医学部 感染制御学・感染症内科 教授)
B型、C型肝炎は慢性化しやすい
ウイルスはビールスとも呼ばれ、細菌より小さい微生物である。その構造は非常に単純で、入れ物である蛋白質の中に遺伝情報(DNA、RNA)である核酸が入っている。細菌と違い、自分だけで増えることはできず、感染した細胞の中で蛋白質をつくり核酸を複製して増殖する性質を持っている。一般に乾燥しても長時間、感染性を維持できるが、熱には弱い。
肝炎ウイルスは現在、AからEの5種類ある。これらの肝炎ウイルスを、蛋白質の面からはエンベロープがあるかないか、遺伝子の面からは核酸がDNAかRNAか、によって大別できる。
世界中で問題になっているのは、B型肝炎ウイルス(HBV)とC型肝炎ウイルス(HCV)である。これらのウイルスは、エンベロープを持っていることが慢性化する原因の1つといわれている。その理由として、変異を起こしたときにエンベロープの蛋白は抗原性を変えやすいため、ワクチンや薬による治療あるいは免疫系から逃れる性質を得やすいということである。
これに対してエンベロープのないA型肝炎ウイルス(HAV)やE型肝炎ウイルス(HEV)は変異が少なく、一過性の感染しか起こさないという違いがある。また、D型肝炎ウイルス(HDV)は、HBVと一緒に感染しないと増殖できないため、日本ではほとんど問題になっていない。
消毒薬に対して、一般にエンベロープのあるウイルスは、外面が疎水性の脂に包まれている性質から、中水準のエタノールにある程度の感受性を示すといわれているが、十分な接触時間が必要である。
[教育講演I] ICNの実務について
谷村 久美(NTT東日本関東病院 看護部・感染対策推進室 感染管理担当看護長)
感染管理看護師の6つの役割
当院は2000年12月に新病院を開設した。新病院の建設設備的感染対策は、(1)余裕あるスペース、(2)汚れにくい構造と建材、(3)交差汚染しにくい計画、(4)その一つとして可能な限りの個室化(個室率49.5%)である。また、患者さんと職員の動線を分離し、スタッフ通路を設けている。
約23人からなる感染対策委員会において、私は事務局を担当している。当院では感染対策推進室が感染対策チーム(ICT)であり、病院長直属である。看護部の中に看護部感染対策委員会があり、各部署にリンクナースを配置し、私はリーダーを務めている。私たち感染管理看護師(ICN)の役割は6つである。
- [教育講演II]
感染制御における臨床薬剤師の役割について
木津 純子(共立薬科大学実務薬学講座 教授)
感染制御における薬剤師の仕事
感染症の発生には、(1)微生物の存在、(2)生体の感染しやすい部位の存在、(3)十分な菌量、(4)感染経路、が必要である。感染制御は、これらの条件の1つをなくして、事前に防止するpreventionと、発生してしまった感染症をさらに広げないcontrolから成っている。
病原体を排除して広げないために、また、発生してしまった感染症をコントロールするために、消毒薬と抗菌薬の2つの薬を適正使用することについて、薬剤師がより関与できればよいと思う。感染制御に関する薬剤師の仕事を表1に示した。
- [パネルディスカッション]
司会進行:小林 寛伊 先生
- パネラー :大久保 憲 先生
小池 和彦 先生 谷村 久美 先生 木津 純子 先生
消毒薬の評価について 梶浦 工 (吉田製薬株式会社 研究開発本部微生物研究室)
消毒薬の評価基準 日本薬局方では、消毒とは、「生存する微生物の数を減らすために用いる処置法で、必ずしも微生物をすべて殺滅したり除去したりするものではない」と定義している。 消毒は、使用用途や目的により必要とされる消毒のレベルが異なるため、ここでは明確な規定は記されていない。しかし、消毒薬を評価しようとすると、菌数をどれだけ減らすかという基準やそれに適した試験法が必要となる。
わが国にはそのような基準や試験法は存在しないが、欧州の統一規格である欧州標準試験では、基本的な浮遊試験において消毒製品に求める殺菌活性を、「107個の菌数を20℃で60分内に102個以下に減少させる能力」と定義している。私どもは消毒製品を評価する際に、1つの基準としてこの数値を参照している。
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Carlisle Vol.12 Suppl.13 Appendix 2007
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