| 手術時手指消毒におけるウォーターレス法について −他の手術時手指消毒法との感染率の比較− Y's Letter Vol.2 No.30 Published online 2007.11.05 |
Download (119kb) |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
はじめに ウォーターレス法(手術時ラビング法)は手術時手指消毒に速乾性手指消毒薬を使用する方法であり、本法の効果については細菌学的な評価(即時効果や持続効果)で有用性を示した多くの報告があります。一方、感染率で評価した報告は、まだあまりありませんが2002年のParientiらの報告で、ウォーターレス法による手術時手指消毒はスクラビング法と同等の感染率を示したことから、本法の有用性が注目され、以来感染率で評価したいくつかの研究が報告されています。今回はウォーターレス法の効果について感染率で評価した文献について述べます。 ウォーターレス法について 手術時手指消毒は、手術部位感染防止のために必要な、最も衛生水準の高い手指衛生です。古くからスクラブ剤を使用した方法(スクラビング法)が行われ、ブラシを用いた10分程度のスクラビング法というかつての長時間の手洗いによって生じる皮膚損傷がかえって微生物数を増やすなどの問題が指摘されています。そのため最近では、ブラシを用いず(爪周囲のみブラシ使用可)スクラブ剤で揉み洗いを行った後、速乾性手指消毒薬を使用するというスクラビング法とラビング法を併用する方法が、多くの施設で採用されています。またスクラビング法やスクラビング法とラビング法を併用する方法と同等以上の効果がある手術時手指消毒方法としてウォーターレス法(手術時ラビング法)が米国疾病管理予防センター(CDC)の手指衛生に関するガイドライン1)で推奨されています。この方法は普通石鹸による素洗いと速乾性手指消毒薬のみで行う新しい手術時手指消毒法であり、従来のブラシを使う方法より手技時間が短い、過度なブラッシングなどによって生じる手荒れが比較的少ない、手指消毒に要するコストが低いなどの特徴を持ちます。また、国内においても厚生労働省の通知2)にて手術時手指消毒法として持続殺菌効果のある速乾性手指消毒薬による消毒が従来のスクラビング法と共に選択可能な方法として挙げられており、スクラブ剤を使用した場合でもスクラビング後にアルコール製剤などによる擦式消毒を併用することが望ましいと述べられています。 ウォーターレス法と従来法(スクラビング法)との感染率の比較 1. Parientiらの報告3) 概要 清潔手術および準清潔手術時の手指消毒にウォーターレス法を適用した場合とスクラビング法(ブラシを用いた2〜5分間の手洗い)を適用した場合との手術部位感染率の比較。 ウォーターレス法の手順
結果
2. Palmerの報告4) 概要 泌尿器科領域における外科手術前の手指消毒にウォーターレス法を適用した場合とスクラビング法(滅菌スポンジ・ブラシを使用した5分間手洗い)を適用した場合との創感染率を比較。 ウォーターレス法の手順
3. 針原らの報告5) 概要 開腹手術(腹腔鏡手術を含む)を施行した症例において創分類クラス1および2を対象とし、手術時手指消毒としてウォーターレス法を行った場合とスクラビング法で行った場合との感染率を比較。 ウォーターレス法の手順
4. 深田の報告6) 概要 清潔手術および準清潔手術時の手指消毒にウォーターレス法またはスクラビング法(ブラシを用いた約8分間の手洗い)を適用した場合の手術部位感染の比較。 ウォーターレス法の手順
結果
おわりに 以上のように、ウォーターレス法は即時効果および持続効果がスクラビング法やスクラビング法とラビング法を併用する方法と同等以上であり、感染率についてはスクラビング法と同等であると評価されています。また本法は手荒れに配慮した方法であり、手洗い時間の短縮やコスト削減効果があることから、有用な手術時手指消毒法と言えます。 <参考文献> 1)CDC: Guideline for Hand Hygiene in Health-Care Settings. MMWR 2002;51(RR-16):1-45. http://www.yoshida-pharm.com/information/ guideline_kaigai/cdc/guideline/newhand.html 2)厚生労働省: 医療施設における院内感染の防止について. 医政指発第0201004号厚生労働省医政局指導通知.平成17年2月1日 http://www.mhlw.go.jp/topics/2005/02/tp0202-1.html 3)Parienti JJ, Thibon P, Heller R, et al: Hand-rubbing with an aqueous alcoholic solution vs traditional surgical hand-scrubbing and 30-day surgical site infection rates: a randomized equivalence study. JAMA 2002;288:722-727. http://jama.ama-assn.org/cgi/reprint/288/6/722 4)Palmer JS.: Use of Avagard in pediatric urologic procedures. Urology 2006;68:655-657. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez? Db=pubmed&Cmd=ShowDetailView&TermToSearch=16979714& ordinalpos=3&itool=EntrezSystem2.PEntrez. Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.Pubmed_RVDocSum 5)針原康、小西敏郎、奈良智之 他: エビデンスに基づいた合理的な手術室感染対策−当院の手術室の特徴も含めて−. 日本外科感染症学会雑誌 2006;3:255-260. 6)深田民人: 手術時手洗い法に対するラビング法とスクラビング法による手術部位感染発生率の比較. 日本外科感染症学会雑誌 2006;3:515-519. | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2007.11.05 Yoshida Pharmaceutical Co.,Ltd. | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||