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II 滅菌法・消毒法概説
3.消毒の分類
2)方法による分類 −物理的消毒法と化学的消毒法−
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(2)化学的消毒法1, 17, 21, 22, 27〜29)
[1] 主な消毒薬
化学的消毒法に用いる主な消毒薬には表7のものがある。
これらの他にも、過酸化水素(日本においてはオキシドールとして主に生体向けに使用、欧米においては高濃度で高水準消毒薬としても使用)、トリクロサン(薬用石けんとして生体に使用)、アクリノール(生体に使用)などがある。
表7 化学的消毒法に用いる消毒薬
高水準 消毒薬 | グルタラール、フタラール、過酢酸 |
中水準 消毒薬 | 次亜塩素酸系(次亜塩素酸ナトリウムなど) ヨードホール・ヨード系(ポビドンヨード、ヨウ素など) アルコール系(エタノール、イソプロパノールなど) フェノール系(フェノール、クレゾールなど) |
低水準 消毒薬 | 第四級アンモニウム塩(塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなど) クロルヘキシジン(グルコン酸クロルヘキシジン) 両性界面活性剤(塩酸アルキルジアミノエチルグリシンなど) |
[2] 消毒薬の効力
消毒薬の作用機序は抗菌薬ほどには解明されていないが、その主な機序は微生物の細胞壁、細胞質膜、細胞質、核酸などに対するもっぱら化学的な反応(酸化、凝固、重合、吸着、溶解など)に起因すると考えられ、その使用濃度、作用温度、作用時間などにより効力は変化する。通常、濃度が高いほど、温度が高いほど、時間が長いほど効力が増大するが、消毒薬の種類によってはあまりに濃度が高いとかえって効力が減弱する場合がある。
また、それぞれの消毒薬には有効な微生物と無効な微生物、つまり抗微生物スペクトルがあり、消毒の対象となる微生物に対する有効性が確認されている消毒薬を選択することが必要である。しかしながら、消毒薬の有効性を判定する統一された試験室内実験法が確立されていないこともあって、一部の消毒薬については有効菌種や有効濃度に関して議論が存在する。
また、同じ菌種であっても、菌株によって一部の消毒薬に対する感受性が異なる場合があり、注意が必要である。このような同菌種内の消毒薬感受性のばらつきについて調べる場合、消毒薬の効力試験法とその判定基準が統一されていない現状においては、「消毒薬耐性」という断定的な区分を行うことは困難であり、「消毒薬抵抗性」と表現するのが適切と思われる。ただし、低水準消毒薬にはその薬液中でも長期間生存、または増殖が可能なほど強い抵抗性をもつグラム陰性菌が存在することもある。
濃度、温度、時間の他にも消毒薬の効力を左右する因子として、薬液との接触の状態、血液など有機物による汚れの存在、薬液のpH、希釈水中に存在する無機イオンの影響、脱脂綿など担体に対する消毒成分の吸着などがある。
[3] 消毒薬を使用する上での注意
消毒薬を有効かつ安全に使用する上では、以下のような注意が必要である。
◆消毒薬の効力を理解して消毒薬と消毒法を選択する
消毒の目的に応じて必要な消毒水準を判断するとともに、抗微生物スペクトルや消毒薬抵抗性の存在などを考慮して消毒薬を選択する。
◆消毒対象物の材質、構造などに適した消毒薬と消毒法を選択する
消毒薬の中には、金属、樹脂などを腐食、変質、変色するものがあるので、対象物に悪影響を及ぼしにくい消毒薬を選択する。また、対象物の構造によっては、例えば管腔など気泡がはさまって薬液が接触しにくい部分があるので、消毒薬への浸漬法を工夫することが必要である。
◆消毒薬を正しく調製し使用する
定められた希釈を行って正しい濃度に調製し、十分な接触時間が確保できるような方法で使用する。希釈水の温度や室温が20℃を下回る場合には作用温度が低すぎる場合があるので留意する。また希釈水が水道水などで硬水の場合、消毒薬によっては成分が沈殿して効力が減弱するので、このような場合には精製水を用いて希釈する。低水準消毒薬は開封後抵抗を示す菌が混入して細菌汚染を受ける場合があるので、粘膜や創傷およびそれらに接触する器具に使用する場合は、希釈後高圧蒸気滅菌するか滅菌精製水を用いて無菌的に希釈し(近年は希釈滅菌済みの消毒薬が市販されている)、頻繁に交換する。薬液のpHによって効力が大きく変化する消毒薬に緩衝化剤が添付されている場合があるので、これを定められた方法で溶解する。消毒薬によっては脱脂綿などの担体に吸着して濃度が低下するものがあるので、この場合には担体に対して十分な量の消毒薬を用いる。
◆血液など有機物で汚染されているものを消毒する場合には前洗浄を十分に行う
消毒薬は器具や環境が血液などで汚染されていると効力が減弱するので、十分な前洗浄が必要である。さらに、消毒薬の蛋白凝固力により血液などが凝固してしまうと消毒薬が浸透しないため、薬液が消毒対象物の表面と接触しない場合があり、また、細菌が対象物表面でバイオフィルムを形成している場合にも同様の不都合が起きるので、ブラッシングを伴う前洗浄が必要な場合もある。
◆消毒薬の副作用、毒性に留意する
消毒薬は基本的に生体に対して毒性を持つ化学物質である。患者や医療従事者に適用する場合にはアナフィラキシー、接触皮膚炎、手荒れ、中枢神経障害などの副作用を伴うことがあるので、過敏症患者への適用、過度の適用、禁忌部位への適用などを避けるよう留意が必要である。また、器具に使用する消毒薬の中には、接触した皮膚を損傷したり、蒸散ガスが臭気を伴うだけでなく毒性を発揮するものもあるので、手袋、マスクなどを着用するとともに適切な浸漬容器を用い十分な環境の換気を必要とする。
◆消毒薬の保管、廃棄に留意する
消毒薬は化学的に不安定なものがあり、熱や直射日光を避けて保管する。次亜塩素酸ナトリウムなど冷所保存(15℃以下など)の必要な消毒薬もあり、指定された保管方法を守る。使用期限を過ぎた消毒薬は使用しない。消毒用エタノールなどアルコール濃度が60w/w%以上の消毒薬は消防法による第四類危険物であるので、これに関する指定数量(400L)などの法規則を守り、火気に注意して保管する。消毒薬の廃棄にあたっては、廃水処理設備の活性汚泥に対する影響や環境全般に与える影響に配慮する必要がある。病床数300床以上の医療機関は「水質汚濁防止法」の規制を受けるが、病床数にかかわらずフェノール類は水質汚濁防止法や下水道法の排水基準によって5ppm以下とする必要がある。
[4] 消毒方法
消毒の主な方法には、以下のものがある。
◆浸漬法
適当な容器に消毒薬を入れ、器具などを完全に浸漬して薬液と接触させる方法である。器具が完全に浸漬できていない場合や気泡などによる不完全な消毒に留意する。
◆清拭法
ガーゼ、布、モップなどに消毒薬を染み込ませて、環境などの表面を拭き取る方法である。十分な量の消毒薬が染み込んでいないことによる不完全な消毒に留意する。
◆散布法
スプレー式の道具を用いて消毒薬を撒く方法であり、清拭法では消毒不可能な隙間などに用いる。この方法は消毒薬を霧状にして室内などに充満させる噴霧法とは異なる。なお、噴霧法は消毒法として推奨されていない。
◆灌流法
チューブ、カテーテル、内視鏡、透析装置など細い内腔構造を有している器具に消毒薬を灌流する方法である。内腔に気泡が残ったり盲端を発生させたりしないように留意する。
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