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III 消毒対象物による消毒薬の選択

III 章 参考文献

1.生体

1)患者

(3)損傷皮膚 18、19)


ここでは損傷皮膚として皮膚の創傷部位、粘膜の創傷部位、感染皮膚面、熱傷皮膚面、褥瘡の消毒について述べる。


1 皮膚の創傷部位

皮膚の創傷部位には一般的な創傷と手術創がある。一般的な創傷は高度に汚染されている場合があり、生理食塩水などによる洗浄を行うことが第一選択となる。壊死部分がある場合には外科的に切除することを考慮する。消毒薬は細胞毒であり、創傷内に適用することはかえって治癒を遅らせる可能性があるため注意が必要である。特に深い創傷の場合には消毒薬を適用した後に生理食塩水などで洗い流すことが望ましい。ただし創傷周辺からの二次汚染を防ぐ目的で、創傷周辺の皮膚を広く消毒することは肝要である。この目的で使用される消毒薬としては、10%ポビドンヨード液、0.05%クロルヘキシジン液、ヨードチンキ、オキシドールがある。このうちオキシドールは毒性が低く、発泡により創傷内で洗浄作用を発揮するため、創傷内の処置に用いる場合がある。

一方、縫合された手術創の場合には創傷内の処置を行う必要がない。米国のガイドラインにおいては、術後24〜48時間滅菌されたドレッシング材で被覆・保護することのみが勧告されている20、21)。日本においても滅菌されたドレッシング材で被覆する方法が勧告されているが22)、手術創やドレーン挿入部周辺からの二次汚染を防ぐ目的で、ガーゼによる被覆を行い毎日周辺皮膚を消毒する方法も行われている。周辺皮膚に適用する消毒薬としては、10%ポビドンヨード液、0.05%クロルヘキシジン液がある。


2 粘膜の創傷部位

粘膜の創傷部位の処置は皮膚の創傷部位の処置に準じる。ただし日本においてクロルヘキシジンの粘膜適用は禁忌であり、その代わりにベンザルコニウム塩化物、ベンゼトニウム塩化物を用いる。この目的で使用される消毒薬としては、10%ポビドンヨード液、0.02〜0.025%ベンザルコニウム塩化物液、0.02〜0.025%ベンゼトニウム塩化物液がある。


3 感染皮膚面

感染皮膚面は難治化することや全身感染症に発展することもあるため、場合により消毒薬の適用を考慮する。しかし、ある程度感染がコントロールされた場合には漫然と消毒薬の適用を続けるべきでない。なお、感染皮膚面への適用が明記されている消毒薬は、10%ポビドンヨード液、0.01%ベンザルコニウム塩化物液、0.01%ベンゼトニウム塩化物液がある。

4 熱傷皮膚面

熱傷皮膚面は感染により難治化しやすい部位であるため、場合により消毒薬の適用を考慮する。しかし、漫然と消毒薬の適用を続けるべきでない。熱傷は程度により、T度:紅斑、U度:水疱、びらん、潰瘍、V度:壊死に分類される。U度熱傷は浅達性のものと深達性のものに分けられるが、深達性U度熱傷は感染を伴った場合にV度熱傷へと進行するため、皮膚が再生しやすい条件を整える必要がある。熱傷の潰瘍面に細菌がいることは考えられるが、感染を起こしていない場合には毎日の入浴によってある程度まで細菌数を減らすことで十分である。局所的に感染しており消毒薬を用いた場合、残った消毒薬によって皮膚再生が遅れることが考えられるので、消毒後に生理食塩水などで洗浄する。なお、熱傷皮膚面への適用が明記されている消毒薬は、10%ポビドンヨード液のみである。


5 褥瘡

褥瘡の消毒の必要性については明確なエビデンスがなく、専門家によって意見が一致していない。一般的には消毒薬が細胞毒性を有することが明らかとなっており、創傷部への消毒薬の使用は推奨されていないが、感染創に限っては使用を認めるべきとの意見もある。褥瘡の消毒にもっぱら使用されているポビドンヨード使用時のメタアナリシス解析によると使用当初は創傷治癒を遅延させるかもしれないが、全経過を通じては創傷治癒を妨げないとされている23)

褥瘡は治癒過程による褥瘡の色の変化を反映して、黒色期、黄色期、赤色期、白色期に病期分類される。厚生省(現厚生労働省)監修のガイドラインにおいては、黒色期から黄色期にかけては消毒薬を適用し、赤色期以降は生理食塩水による洗浄をすることが推奨されている24)(表8)。また日本褥瘡学会のガイドラインによると、褥瘡のケアは洗浄のみで十分であり、通常消毒は必要ないが、明らかな創部の感染を認め、浸出液や膿苔が多い時には洗浄前に消毒を行ってよいとしている25)。米国においては創面の洗浄や創傷の細菌を減らす目的で局所に細胞毒である消毒薬を用いるべきでないとされ、もっぱら生理食塩水を用いるよう推奨されている26)。また欧州においては水道水による洗浄を行うことと、細菌汚染の程度によって必要な場合にのみ消毒薬を使用することが推奨されている27)

表8 厚生省(現厚生労働省)の褥瘡ガイドラインにおける消毒の要点24)

消毒薬の使い方

  1. ポビドンヨードなどの消毒薬は感染をコントロールする作用は強いが、細胞毒でもある。

  2. 消毒薬を含む外用剤は、感染がコントロールされた後には漫然と使用しない。

  3. 創面の消毒の功罪についてはさまざまな意見がある。消毒を行うとしても、壊死組織を伴い、感染の危険性の高い黒色期、黄色期のみに止めるべきである。

  4. 消毒後は生理食塩水で洗浄を行い消毒薬を残さない。ポビドンヨードであれば、消毒1〜2分後に生理食塩水で洗浄する。

  5. 消毒薬、あるいは消毒薬を含む外用剤を使用する場合は、消毒薬に対するアレルギーに注意が必要である。ヨードアレルギーのものにポビドンヨードやポビドンヨードシュガーなどを用いてはならない。創周囲の健常皮膚に紅斑、小水疱が見られるときには、消毒薬による接触皮膚炎を考え、副腎皮質ホルモン剤を外用する。

創の洗浄

  1. 毎日の処置において生理食塩水で創面を洗浄することによっ て、デブリドマンを促進する。

  2. 人肌程度に温めた生理食塩水で、ポケット内部も含めてよく洗浄する。肉芽組織を損傷しないために、ガーゼや綿球で創面を擦ったりしない。

  3. 生理食塩水のプラボトルの先に18G針や局所洗浄用ノズルを付けて洗浄を行うと便利である。

  4. 生理食塩水による洗浄後、創周囲の健常皮膚に残った水を乾いたガーゼ等で吸い取る。これは皮膚の湿潤があらたな褥瘡の原因となるからである。


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