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抗微生物スペクトル早見表適用部位早見表消毒薬使用濃度一覧

>>> III章参考文献


III 消毒対象物による消毒薬の選択
1.生体

1)患者

(5)手術部位の皮膚・粘膜18, 19, 20〜22)

手術部位においては微生物に対するバリアとしての皮膚・粘膜が切り開かれ、本来無菌である組織が開放されるため、感染の成立する危険性が非常に高い。したがって手術部位の消毒においては、周辺の皮膚・粘膜を含め手術部位の微生物数をできるかぎり少なくするように努めることが重要である。米国における定義に従うと手術創は表10のように4クラスに分類され、また手術部位感染(surgical site infection、SSI)はその感染部位により、切開部表層感染、切開部深層感染、臓器・腔感染の3つに分類される。手術部位感染の危険性はこれらのクラスに応じて異なり、汚染度の高い手術においては消毒のみならず抗菌薬の予防的投与など内因性感染に対する対策が重要となる。

表10 手術創の分類
クラス1 清潔炎症が見られず、気道、消化管、生殖器、未感染尿路に至っていない感染のない手術創
クラス2 準清潔管理された状態で気道、消化管、生殖器、尿路に達した異常な汚染のない手術創
クラス3 汚染偶発的な新鮮開放創。無菌技法に重大な過失があった手術、あるいは胃腸管からの著しい洩れ、および内部に非化膿性の急性炎症がある切開創
クラス4 不潔・感染壊死組織が残っている古い外傷、および臨床的に感染症状があるかまたは内臓が穿孔しているもの。術後感染の病原微生物は手術前から手術野に存在する


[1] 手術部位の皮膚

術前の手術部位の皮膚に適用のある消毒薬は多数あるが、薬剤の選択により手術部位感染率が変化するという報告はいまだ少ない。ポビドンヨードを用いた場合よりクロルヘキシジンを用いた場合の方が感染率が低かったとする報告があるが、手術部位によっては優劣が逆転するため31)、結論付けるためにはさらなる臨床研究が必要と思われる。日本においては、10%ポビドンヨード液、10%ポビドンヨードエタノール液、0.5%クロルヘキシジンエタノール液などを用いる場合が多い。消毒用エタノールを用いる場合や、ポビドンヨード製剤を適用後ハイポアルコールで脱色する場合には、残留成分による持続効果を期待することができない。また、アルコールを含有した製剤を用いた後に電気メスを使用する場合には、引火の恐れがあるので必ず乾燥させてから電気メスを使用するべきである。

米国の手術部位感染防止ガイドライン20,21)における手術部位の前処置、術後ケアに関連する要点を表11に示す。

表11 米国ガイドラインにおける手術部位に関連する要点
A手術部位あるいは周辺の体毛が手術の支障となる場合を除いて術前の除毛は行わない。手術前の除毛はいかなる方法においても手術部位感染率の増加に結びつくからである。除毛する場合には、手術直前に、なるべく電気クリッパー(バリカン)を用いて除毛する。
B少なくとも手術前夜に生体消毒薬を用いた術前のシャワー浴あるいは入浴をするよう患者に指示する。術前のシャワー浴が手術部位感染率を低下させるという証拠はないが、手術部位の微生物コロニー数は減少する。手術前に2回の生体消毒薬シャワーを浴びた700名以上の患者の研究によると、細菌コロニー数はクロルヘキシジンスクラブ、ポビドンヨードスクラブ、トリクロサン製剤によるシャワー浴においてそれぞれ、9分の1、1.3分の1、1.9分の1となった。
C手術野および周辺部位を皮膚消毒する前に、大きな汚染を除去する目的で十分に洗浄する。
D皮膚消毒のために適切な生体消毒薬を用いる。使用可能な消毒薬としては、ヨードホール(ポビドンヨード)、アルコール含有製剤、クロルヘキシジンなどがある。
E術前皮膚消毒は、同心円を描くように中心から周辺に向かって行う。消毒範囲は場合により切開を延長しても、また新たな切開部位やドレーン挿入部位を追加しても十分な大きさとしなければならない。
F一時的に閉鎖した切開創は、術後24〜48時間の間は滅菌した被覆材(ドレッシング)で保護する。一時的に閉鎖した切開創を48時間以降も被覆するべきか否か、また手術創に被覆なしでシャワー浴または入浴する適切な時期については特に勧告しない。


[2] 手術部位の粘膜

手術部位の粘膜の消毒には10%ポビドンヨード液が用いられる場合が多い。0.01〜0.025%塩化ベンザルコニウム液、0.01〜0.025%塩化ベンゼトニウム液も使用できる。このほかに適用のある消毒薬として次亜塩素酸ナトリウム、塩酸アルキルジアミノエチルグリシンがあるが、実際に使用することはまれである。


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