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抗微生物スペクトル早見表適用部位早見表消毒薬使用濃度一覧

>>> III章参考文献


III 消毒対象物による消毒薬の選択
2.器具および環境26, 32, 45, 46, 51〜56)


器具および環境の滅菌・消毒においては、基本的にそれぞれの対象物に求められる清浄度に応じて滅菌・消毒方法を選択しなければならない52,53)。血液や体液の付着した器具に関して患者の感染症ごとに消毒方法を変更することは、スタンダードプリコーションの原則に反することとなる。また、滅菌・消毒の手順を明確に定め、常に必要な清浄度のレベルが達成されるよう滅菌・消毒業務を確立することも重要である。個々の医療従事者により消毒の手順が異なる場合には、病院感染対策の質が保証されているとは思われない。一方、必要とされる以上のレベルで滅菌・消毒を行っても、それは労力や経費の無駄であり、かえって有害な対策となる場合もある。例えば病室の環境清掃において高水準消毒薬を使用することは無駄であり有害であるので、行うべきでない54,55)


1)器具 26,32,51,56)

器具の消毒水準と消毒方法は、どのような感染症例に使用した器具であるかではなく、どのような用途に再使用する器具であるかを基準として決定するのが基本である。つまり、器具の使用用途に応じて必要な消毒水準を定めるべきであり、このような標準予防策的な対策が徹底している場合には、患者の感染症によって消毒方法を変更するべき場合は限られている。もっぱら感染症の種類により消毒マニュアルを定めている医療機関においては、標準予防策の原則に照らしてマニュアルに問題が無いか再検討を加える必要がある。 器具を使用用途ごとに分類した体系としては、Spauldingの提唱した体系が明解かつ合理的であるため、現在も多くのガイドラインがそれに準拠している。Spauldingの分類によると、患者ケアに用いられる器具や物品は、それらが関与する感染リスクの程度によって表22の3つに分類される26, 51, 56)

表22 Spauldingによる器具分類
器具分類
用途

クリティカル器具
(critical items)
無菌の組織や血管に挿入するもの手術用器具、循環器または尿路カテーテル、移植埋め込み器具、針など
セミクリティカル器具
(semi-critical items)
粘膜または健常でない皮膚に接触するもの呼吸器系療法の器具や麻酔器具、軟性内視鏡、喉頭鏡、気管内挿管チューブ、体温計など
ノンクリティカル器具
(non-critical items)
健常な皮膚とは接触するが、粘膜とは接触しないものベッドパン、血圧計のマンシェット、松葉杖、聴診器など
(ベッド柵、テーブルなど環境表面を含めてノンクリティカル表面と言う)

また、Spauldingは消毒の水準についても分類を行ったが、それに基づいて表23の4つの水準に分類される26)

表23 Spauldingによる消毒水準分類
滅菌
(sterilization)
いかなる形態の微生物生命をも完全に排除または死滅させる。*
高水準消毒
(high-level disinfection)
芽胞が多数存在する場合を除き、すべての微生物を死滅させる。
中水準消毒
(intermediate-level disinfection)
結核菌、栄養型細菌、ほとんどのウイルス、ほとんどの真菌を殺滅するが、必ずしも芽胞を殺滅しない。
低水準消毒
(low-level disinfection)
ほとんどの栄養型細菌、ある種のウイルス、ある種の真菌を殺滅する。
*現実には完全な排除または死滅を保証することはできず、無菌性保証レベルを設定して運用する。詳しくはII. 1. 滅菌・消毒とはを参照。なお、ここでプリオンは対象外であり通常の滅菌条件では不活性化されない。

これらのことを総合して、器具の分類ごとに必要な消毒水準は表24のようにまとめられる26)

表24 器具分類と消毒水準

クリティカル器具
滅菌が必要。
セミクリティカル器具高水準消毒が必要。ただし、一部のセミクリティカル器具(健常でない皮膚に接触する水治療タンク、粘膜に接触する体温計)は中水準消毒でよい。また、歯科用セミクリティカル器具は加熱滅菌する。(注)
ノンクリティカル器具低水準〜中水準消毒または洗浄、清拭を行う。
(注)ネブライザー関連器具はセミクリティカル器具に分類されるが、安全に高水準消毒をすることが困難な場合が多く、中水準消毒を適用することが多い。

以上によると、ノンクリティカル器具を除くほとんどすべての器具について滅菌または高水準消毒を行うこととなる。したがって、HBV、HCV、HIV、MRSA、VREなどに感染した患者に使用した器具であっても、それらの感染起因微生物を十分に殺滅することができる水準であるため、患者により消毒方法を区別する必要性がない。ただし、結核菌など抗酸菌については高水準消毒薬を用いた場合でも比較的長い接触時間が必要であり、すべてのセミクリティカル器具について常にそれを確保することは実務的に容易でない。したがって気管支内視鏡や呼吸器系装置など気道分泌物が付着するセミクリティカル器具を消毒する場合に、結核菌にも十分有効な接触時間をとることが多い。

また、ノンクリティカル器具の消毒が必要となるのは、主に接触予防策が必要な場合であり、その他の場合には血液や体液が付着した場合などを除き特に必要性がない45,46)。接触予防策の主な対象であるMRSAやVREは低水準消毒を適切に行えば殺滅することができるので、接触感染するウイルスを対象とする場合などを除き、感染症の種類によって消毒水準を区別する必要性はない。ただし湿潤した器具・環境には低水準消毒薬に強い抵抗性を示すグラム陰性菌が存在するので、それらにはアルコールや次亜塩素酸ナトリウムなどを用いる。


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