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抗微生物スペクトル早見表適用部位早見表消毒薬使用濃度一覧

>>> III章参考文献


III 消毒対象物による消毒薬の選択
2.器具および環境

2)物品 32,45,46,54,55,70)

本テキストにおいては、リネン、食器、浴槽、洗面台などを物品として分類し、その消毒法について述べる。一般にリネンや食器を経由した感染伝播が発生したとする報告は少ない。リネンや食器は通常でも洗剤と温水によって洗濯または洗浄され、十分な清浄化がなされた上で再利用されるからであると思われる。リネンや食器を経由した感染伝播の可能性が問題となる場合でも、耐熱性のものであるかぎり、熱水を用いて洗浄を行うことにより消毒を兼ねることが基本となる。日本においてはリネンと器具類の熱水消毒の基本条件として80℃10分が勧告されている32, 71, 72)。リネンについて、CDCの2003年環境感染管理ガイドライン54,55)では71℃25分が勧告され、英国においては65℃10分または71℃3分が勧告されている73)。英国においては別に器具類の熱水消毒の条件があり、それは71℃3分、80℃1分、または90℃12秒である63)。一般に65〜100℃の熱水による処理は感染が問題となるほとんどの微生物を死滅させることができる(表27)。

表27 各国の熱水消毒の条件32, 63, 71〜73)
  リネン器具類
温 度 時 間温 度 時 間
日 本 80℃10分 80℃10分
米 国 71℃25分 基準なし
英 国 65℃
71℃
10分
3分
71℃
80℃
90℃
3分
1分
12秒

熱水消毒を行うことが不可能な食器、リネン、その他の物品で、感染伝播の可能性が問題となる場合には、表28のような消毒薬に浸漬または清拭して消毒する。

食器に用いる場合には消毒薬の残留毒性に鑑み、残留性や毒性の低い次亜塩素酸ナトリウム、消毒用エタノールを選択する。

表28 熱水消毒ができない物品に用いる消毒薬
食 器
  • 100〜1,000ppm(0.01〜0.1%)次亜塩素酸ナトリウム液
  • 消毒用エタノール
リネン
  • 100〜1,000ppm(0.01〜0.1%)次亜塩素酸ナトリウム液
  • 0.1〜0.2%塩化ベンザルコニウム液
  • 0.1〜0.2%塩化ベンゼトニウム液
  • 0.1〜0.2%塩酸アルキルジアミノエチルグリシン液
その他の物品
  • アルコール系消毒薬(消毒用エタノール、70%イソプロパノール、イソプロパノール添加エタノール液)
  • 100〜1,000ppm(0.01〜0.1%)次亜塩素酸ナトリウム液
  • 0.1〜0.2%塩化ベンザルコニウム液
  • 0.1〜0.2%塩化ベンゼトニウム液
  • 0.1〜0.2%塩酸アルキルジアミノエチルグリシン液

(1)リネン

CDCの1985年ガイドライン38, 39)は「使用済みのリネン類には病原性微生物が多数存在することが確認されているが、(通常の洗濯や衛生保管が行われているならば)実際の疾病伝播の危険性はとるに足らない程である。」と述べ、乾燥やアイロンがけによる加熱も微生物減少に効果があると説明した。その改定版である2003年環境感染管理ガイドラインも同様に54,55)、71℃25分間の熱水洗浄をする方法と熱水が使用できない場合には適切な化学洗剤などを用いる方法を勧告している。CDCの1996年隔離予防策ガイドライン45,46)においては「血液、体液、分泌物、排泄物で汚染されたリネンは皮膚や粘膜の曝露や衣服の汚染を防ぎ、ほかの患者や環境への微生物の伝播を避ける方法で処理、運搬する」と勧告されている。

日本の「消毒と滅菌のガイドライン」32)も同様に、感染性のあるリネンは水溶性ランドリーバッグもしくはビニール袋に入れ感染性を明記して洗濯施設に運搬することとし、感染性のあるリネンの洗濯・消毒方法として表29のものをあげている。 また、洗濯の基本として表30の事項が挙げられている。

表29 「消毒と滅菌のガイドライン」によるリネン類の消毒法
A80℃の熱水で10分間以上の洗濯処理を行う方法
B次亜塩素酸ナトリウムなどの塩素系消毒薬を加えて洗濯を行う方法
B型肝炎ウイルスなどの汚染が考えられるリネンは、1,000ppm(0.1%)次亜塩素酸ナトリウム液に30分間浸漬する。その他の場合には200ppm(0.02%)に5分以上浸漬する。
Cその他の消毒薬を加える方法
塩素系消毒薬の漂白効果により影響を受けるリネンは、0.1%塩化ベンザルコニウム液、0.1%塩化ベンゼトニウム液または0.1%塩酸アルキルジアミノエチルグリシン液に30分間浸漬する。
Dすすぎの段階で次亜塩素酸ナトリウムを使用する方法
100〜200ppm(0.01〜0.02%)次亜塩素酸ナトリウム液のすすぎ水に5分間浸漬する。

表30 「消毒と滅菌のガイドライン」による洗濯の基本
A感染性の低いと考えられるものから洗濯する
B汚れの少ないものから洗濯する
C洗濯の材質や汚れ具合に応じた洗濯時間、洗濯方法、使用洗剤、すすぎの回数などを工夫する
D漂白剤、酵素など適当なものを選択する


(2)食器など

CDCの1996年隔離予防策ガイドライン45,46)は「皿、グラス、カップおよび食器に対する特別の予防策はない。ディスポーザブルおよび再使用可能な皿や食器は隔離予防策下にある患者に使用できる。病院の食器洗浄器で使われている熱水と洗剤の組み合わせは皿、グラス、カップおよび食器の除菌には十分である。」と述べている。

日本の「消毒と滅菌のガイドライン」32)と「大量調理施設衛生管理マニュアル」(1997年)74)において記述されている給食における消毒方法の要点は表31のとおりである。食器洗浄器による熱水洗浄の通常条件は80℃1秒間である。熱水を使用できない場合には、200ppm(0.02%)次亜塩素酸ナトリウムに5分以上浸漬する75)

表31 大量調理における消毒方法32, 74)
A.食器の手による洗浄
  1. 3槽のシンクを利用する
  2. 第1槽の温水は50〜55℃を確保する
  3. 中性洗剤の濃度を規定どおりとする
  4. 第2槽は洗剤を除去するため、40℃以上の温水が継続的に補給され、オーバーフローしていること
  5. 第3槽は最終消毒用として熱水が77℃以上に保持され、90秒以上浸漬する
B.食器の機械洗浄
  1. 洗浄槽内は最低60℃を維持し、最終リンス温度は80〜90℃とする
  2. コンベア型では洗浄速度を正確に保持する
  3. 給湯ノズルの汚染に注意する
C.配膳カート、その他
  調理設備の消毒
配膳カート、テーブル、棚は熱水による洗浄が困難なため、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムまたは塩酸アルキルジアミノエチルグリシンを使用して清拭消毒する。鍋、釜、包丁などは80℃5分間以上加熱する。まな板は洗剤で洗浄後、80℃5分間以上の熱水または500ppm(0.05%)次亜塩素酸ナトリウム液で消毒する。ふきん、タオルなどは100℃5分間以上煮沸消毒をする。調理機械、調理台などは70%アルコール(消毒用エタノールが相当)で消毒する。



(3)その他の物品

その他の物品も感染伝播の経路として問題となる場合は限られている。浴槽や洗面台などを経由した感染伝播が問題となる場合には、0.2%塩化ベンザルコニウム液、0.2%塩化ベンゼトニウム液または0.2%塩酸アルキルジアミノエチルグリシン液で清拭して消毒し、熱水ですすぐ。洋式トイレの便座、フラッシュバルブ、水道ノブなどの消毒が必要な場合にはアルコール系消毒薬で清拭する。一般に常に湿潤している物品・環境においては緑膿菌やセラチアなどグラム陰性桿菌が増殖している場合があり、これらの細菌は低水準消毒薬に抵抗性を持つことがあるので、消毒が必要な場合には熱水、500ppm(0.05%)次亜塩素酸ナトリウム液、またはアルコール系消毒薬で中水準消毒を行うことが望ましい。血液などで汚染された場合には、汚染を拭き取った上、1,000ppm(0.1%)の次亜塩素酸ナトリウム液、場合によりアルコールで清拭する。(III-2-1)-(3)ノンクリティカル器具、およびIII-2-3)-(2)ベッド周辺などを参照)


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