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抗微生物スペクトル早見表適用部位早見表消毒薬使用濃度一覧

>>> IV章参考文献


IV 対象微生物による消毒薬の選択
2.一般細菌

2)グラム陰性菌

(2)その他のグラム陰性菌

この節では腸内細菌科細菌について述べる。 腸内細菌科という名称は分類学上のものであり、腸内細菌の一部のほか、通常では腸管に存在しないセラチアなども属している。病院感染上問題となる代表的な腸内細菌科細菌としては、大腸菌、クレブシエラ、エンテロバクター、セラチア、プロテウス、シトロバクターがある。 腸内細菌科の赤痢菌、サルモネラ、および腸内細菌科以外のグラム陰性菌についてはIV-8 感染症法の類別における微生物を参照。

大腸菌やクレブシエラにおいては、抗菌薬感受性が本来良好であるが、第3世代セフェム系薬を分解する基質拡張型β−ラクタマーゼ(extended-spectrum beta-lactamases:ESBLs)を産生するプラスミド性遺伝子により多剤耐性が拡散したことが、欧米で大きな問題となっている115)。日本においてESBLsが検出される頻度はまだ比較的低いが116)、特定施設において高頻度に検出されることもある。エンテロバクター、セラチア、プロテウス、シトロバクターは本来的にβ−ラクタマーゼ産生であり、さらに耐性を拡大することもある。


[1]大腸菌(Escherichia coli

大腸菌はヒトや動物の腸内常在細菌のひとつであるが、病院感染において主要な細菌のひとつであり、尿路感染、呼吸器感染、血流感染、手術部位感染を起因し、肺炎、敗血症、髄膜炎、腹膜炎などをもたらす場合がある。

また、病原性大腸菌が健常人に消化器感染を起こすことがあり、その場合も病院感染上の問題となるが、それらは病型により以下のように分類される117)

・ 腸管病原性大腸菌(enteropathogenic Escherichia coli: EPEC)
・ 腸管出血性大腸菌(enterohaemorrhagic Escherichia coli: EHEC)
・ 腸管侵入性大腸菌(enteroinvasive Escherichia coli: EIEC)
・ 毒素原性大腸菌(enterotoxigenic Escherichia coli: ETEC)
・ 腸管付着性大腸菌(enteroaggregative Escherichia coli: EAEC)
・ びまん付着性大腸菌(diffuse-adherent Escherichia coli)
・ 細胞致死性膨潤毒素産生大腸菌(cytolethal distending toxin-producing Escherichia coli)

腸管出血性大腸菌についてはIV-8-4 三類感染症を参照。


[2]クレブシエラ(Genus Klebsiella118)

ヒトの腸管や口腔内の常在菌であるが、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)による肺炎は市井でもアルコール多飲者などに発生する。病院感染として肺炎桿菌は、肺炎など呼吸器感染のほか、尿路感染、血流感染、手術部位感染などを起因する。バイオフィルムを形成することもあるため、留置カテーテルに関連して重要となることもある。Klebsiella oxytocaによる病院感染もある。


[3]エンテロバクター(Genus Enterobacter119)

Enterobacter cloacaeEnterobacter aerogenesは、ヒト、動物の腸内に常在するが、水、土壌などにも広く分布し、病院環境にも存在する。感染防御能低下患者では、尿路感染、呼吸器感染、敗血症などを起こす。エンテロバクターで汚染された器具、薬剤、水、医療従事者の手指を介した感染伝播も報告されているが120)、感染の多くは内因性感染と言われている。


[4]セラチア(Genus Serratia121)

Serratia marcescensなどのセラチアは、水や土壌に広く分布し、病院の湿潤環境からも検出される。Serratia marcescensは赤色からピンクの色素を産生することが多い。感染源、伝播経路、抗菌薬耐性、消毒薬抵抗性などの面でブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌と類似している。感染防御能低下患者では、尿路感染、呼吸器感染、血流感染などを起因し、敗血症、髄膜炎、骨膜炎、心内膜炎、肺炎を起こし死に至ることもある。多剤耐性を示す場合もあり、第3世代セフェム系薬とカルバペネムに耐性を示したとの報告がある122)。消毒薬については、グルコン酸クロルヘキシジンや塩化ベンザルコニウムなどの低水準消毒薬に対して抵抗性を示す場合があり、病院感染起因菌として重要である。

セラチアによる病院感染について、濃度管理などが適切でなかったアルコール綿が原因のひとつとの疑いが報告されたが123, 124)、その後の調査により、非常に濃度低下したアルコール綿が高度に汚染されないかぎり、セラチアがアルコール綿で生存できないことが報告されている125)。単包あるいは複数枚入りパック製品のアルコール綿を使用することは様々な面で衛生的・合理的であるが、それ以外の形態でのアルコール綿使用が不適切であると考える必要はない。万能壷であっても注ぎ足しをせず定期的な調製を行えばよい。なお、ヘパリンなど輸液類の多数回使用によるセラチア汚染の危険性が指摘されている。


[5]プロテウス(Genus Proteus126)

Proteus mirabilisProteus vulgarisはヒト、動物の腸内および自然界に広く分布し、日和見感染を起こすが、尿路感染では上行性となり腎盂腎炎を起因することがある。また、呼吸器感染、創傷感染を起因することもある。


[6]Citrobacter freundii 127)

Citrobacter freundiiはヒト、動物の腸内および自然界に広く分布し、日和見感染を起こす。尿路感染、呼吸器感染、手術部位感染、血流感染を起因する。


病院感染対策および消毒

一般に腸内細菌では、糞便で汚染された水や食品を介する経口感染が多いが、病院では医療従事者の手指、医療器具を介した感染もある。通常は標準予防策を基本とするが、腸管出血性大腸菌などには糞便を念頭においた接触予防策を追加する。 (IV-8-3) 二類感染症参照)

腸内細菌科細菌に分類される細菌の消毒薬感受性はおおむね良好で、塩化ベンザルコニウム、両性界面活性剤などの低水準消毒薬で十分である。

ただしセラチアについては、ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌と同様の注意を払って消毒薬を選択し、湿潤器具、湿潤環境、水性薬剤などの汚染を念頭においた感染対策を行う。
 

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