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IV 対象微生物による消毒薬の選択 3.真菌 2)糸状菌 [1]アスペルギルス(Genus Aspergillus)113, 135, 136) 病院感染において特に問題となる糸状菌はアスペルギルスである。Aspergillus fumigatus、Aspergillus flavus、Aspergillus nigerなどは広く自然界の土壌や空中に存在するが、好中球減少症患者、造血幹細胞移植患者などにおいて侵襲性を発揮し、アスペルギルス症としての皮膚炎、副鼻腔炎、気管・気管支炎、肺炎、脳炎などを起因する。また、空気中に大量の胞子が存在する場合にはその他の易感染患者においてもアルペルギルス症を起因する。 移植病棟などに隣接する場所で建築改修工事が行われている場合、明らかに肺アスペルギルス症の発症率が高くなったという報告がある137, 138)。アスペルギルスは環境のいたるところに存在するため、病院内の空調設備を定期的にメンテナンスすること、清掃は湿式清掃を基本とすること、改修工事の際には空気流を遮断するなどの対策が必要である113)。また、造血幹細胞移植病棟ではHEPAフィルターによる空調の管理が重要である135, 136, 139, 140)。 [2]ムコール(Order Mucorales)141) ムーコル目に属するAbsidia spp.、Mucor spp.、Rhizopusspp.などは広く自然界に存在するが、好中球減少症患者などにおいてムコール真菌症としての肺炎、真菌血症、中枢神経系感染、鼻腔感染、眼窩感染、胃腸管感染や皮膚感染を起因する。空気中に浮遊する胞子を吸入することにより、鼻腔や肺に伝播する。 [3]皮膚糸状菌 142) Trichophyton spp.、Microsporum spp.などの皮膚糸状菌は表在性真菌症である白癬の原因菌で、頭部白癬(しらくも)、汗疱状白癬(水虫)、体部・陰股部頑癬(いんきんたむし)、爪白癬等を引き起こす。皮膚糸状菌症は特に免疫不全患者において発生しやすく、患者のクオリティーオブライフを損ねる。 [4]病院感染対策および消毒 アスペルギルス症は、アスペルギルスが増殖した老朽建材などの感染源から、媒介物としての空気が胞子を運んで伝播するため、ハイリスク患者の病室における空調管理が感染予防策として重要である。ただし、ヒトからヒトへの伝播は通常ないため、感染症例については標準予防策を行うことで十分であり、感染症例を感染源とみなした空気予防策を行う必要はない。ムコール真菌症についても同様である。表在性真菌症は手や物品などを介してヒトからヒトへ伝播する可能性があることに注意が必要である。 糸状菌を特に対象としたノンクリティカル器具や環境の消毒が必要となる場合は少ない。通常は日常的な清拭、洗浄、湿式清掃で十分である。糸状菌は消毒薬に対して抵抗性があり、消毒が必要な場合には、500〜1,000ppm(0.05〜0.1%)次亜塩素酸ナトリウム、アルコール、熱水(80℃10分)を用いる。 高水準消毒薬やポビドンヨードも有効であるが、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、両性界面活性剤など低水準消毒薬の常用濃度では24時間以上接触しても効果のない真菌も存在する22)。したがって、糸状菌に対して低水準消毒薬の効果が期待できない場合が存在するため、糸状菌の消毒には中水準以上の消毒薬を用いたほうがよい。 消毒用エタノールはAspergillus nigerに対して2分半で効果を示すが、70%イソプロパノールは30分を要するという報告がある24)。クレゾール石ケン液の1.0〜2.0%液(クレゾールとして)は1時間以内の接触で殺真菌効果を示す23)。このように中水準消毒薬においても、アルコールやクレゾール石ケン液は比較的長い接触時間を要する場合がある。 糸状菌を対象とするノンクリティカル表面の消毒法を表40に示す。 表40 糸状菌を対象とする消毒法
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