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IV 対象微生物による消毒薬の選択

IV 章 参考文献

4.抗酸菌

抗酸菌(Mycobacterium spp.)はグラム陽性桿菌で、細胞壁に多量の脂質を含有するため消毒薬抵抗性が強いが、熱、日光、紫外線により死滅する。抗酸菌は結核菌と非定型抗酸菌に分類される。


1)結核菌(Mycobacterium tuberculosis143)

結核菌は結核の原因菌である。活動性肺結核患者の呼気から発散される飛沫核に含まれ、長期間室内空気中に浮遊してヒトに伝播する。初期結核は多くの場合不顕性であり、そのまま潜在性結核に移行し、その後2年以内に5%、2年以降にさらに5%が結核を発症すると言われる。近年でも多くの死者を出しており、先進国での罹患率上昇や多剤耐性結核(multidrug-resistant tuberculosis:MDR-TB)が問題となっている。

結核の感染予防策としては、標準予防策に加え空気予防策が必要である。CDCガイドラインによる空気予防策の要点を表42に示す144〜146)。米国の労働安全衛生機構(NIOSH)の性能基準に合致するマスクとして、直径0.3μm以上の粒子を95%以上ろ過するN95微粒子マスクが推奨されている。

表42 空気予防策の要点

患者は次の条件を備えた個室に入れる

  • 周囲の区域に対し陰圧に設定

  • 1時間に12回以上(新築・改修設備)または6回以上(既存設備)の換気がなされ、適切な戸外に排気されるか、もしくは、室内空気が他区域へ循環する前に超高性能ろ過を受けるように設定

  • 部屋のドアは閉じたままにする

  • 患者は原則として室内に制限
    ただし、同じ微生物による活動性感染症を持った(他の感染症はない)患者との同室は可能

患者の部屋に入室するときはN95マスクを着用する

患者が移動するときはサージカルマスクを患者に着用させる


呼吸器系装置や喀痰吸引から飛沫による伝播のほか144)、気管支内視鏡の消毒不良を介した結核伝播が報告されているので147、148)、呼吸器系のセミクリティカル器具は結核菌に対する十分な効力を念頭に高水準消毒を行うべきである。このことは高水準消毒の定義から当然のことであるが、セミクリティカル器具の種類によっては必ずしも結核菌に十分有効とはいえない方法を用いる場合がある。

III-2-1)-(2) セミクリティカル器具 参照】

なお、気道粘膜に触れる薬剤の汚染にも注意が必要である149)

ただし、ノンクリティカル器具や環境表面を介した伝播は特に報告がない。したがって、結核症例に使用した器具であっても、喀痰などによる特別な汚染がなければ、通常の洗浄・清拭・消毒を行えばよい。室内も通常の清掃でよい144)

結核菌を対象として消毒する場合には、表43の消毒法を用いる5、26、38、179)。低水準消毒薬であるベンザルコニウム塩化物やクロルヘキシジングルコン酸塩は無効である。

表43 結核菌を対象とする消毒法

セミクリティカル器具
(気管支内視鏡など)

2〜3.5%グルタラール(前洗浄後20分以上)
0.55%フタラール(12分)
0.3%過酢酸(時間は温度による)

ノンクリティカル表面
(特に消毒が必要な場合)

熱水(80℃10分)
アルコール
0.5〜1%クレゾール石ケン液*
0.2〜0.5%アルキルジアミノエチルグリシン塩酸塩液
1,000ppm以上の次亜塩素酸ナトリウム液(低濃度では無効)

* 濃度はクレゾールとして


2)非定型抗酸菌 150)

Mycobacterium kansasiiMycobacterium gordonaeMycobacterium aviumMycobacterium chelonaeなどは、非定型抗酸菌または非結核性抗酸菌と呼ばれ、広く水系環境に存在し、動物からも検出される。健常人でも肺疾病を起因することがあり、免疫不全患者においては肺感染、手術部位感染、皮膚感染、腹膜炎、心内膜炎などの病院感染を起因する。水道水にも存在するため、セミクリティカル器具の洗浄水には滅菌精製水を用いるか、水道水を用いた後アルコールを適用する。免疫不全患者の飲料水等にも注意が必要である。消毒法は結核菌に準ずればよいが、非定型抗酸菌の中には2%グルタラールや0.5%両性界面活性剤に抵抗性を示すものがある27、28)


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