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抗微生物スペクトル早見表適用部位早見表消毒薬使用濃度一覧

>>> IV章参考文献


IV 対象微生物による消毒薬の選択
5.ウイルス

2)その他のウイルス150, 165, 166)

この節では病院感染起因ウイルスとして代表的なものを簡略に列記し、必要な感染対策の概要と消毒法の選択について説明する。 これらのウイルスは市井感染においても重要であり、感染症法で指定されたウイルス感染症としてIV-8 感染症法の類別における微生物で個々に述べる。


(1)消化器関連ウイルス

消化器に関連する主なウイルスには、ノロウイルス(以前はノーウォーク様ウイルス、または小型球形ウイルス)、ロタウイルス、アストロウイルス、ないしアデノウイルスの一部など経口感染により急性胃腸炎をもたらすものがあり、またエンテロウイルスであるポリオウイルスのように経口感染により咽頭や消化管に感染したのち脳や脊髄などで発症するものもある。 また、A型肝炎ウイルスとE型肝炎ウイルスも経口感染するが、肝臓が主な感染部位である。これらのウイルスは糞便中に排泄され、ヒトからヒトへ糞便−経口感染するため、飲食物、手指、器具などの衛生管理が重要である。乳幼児の間では汚染された玩具を口にすることにより感染することもある。病院感染対策は基本的に標準予防策であるが、小児や失禁がある場合などにおいては必要に応じて接触予防策を行う。


(2)呼吸器感染ウイルス

呼吸器に感染する主なウイルスとして、インフルエンザウイルス、RSウイルス、パラインフルエンザウイルス、ライノウイルス、コロナウイルス、ないしアデノウイルスの一部がある。 インフルエンザウイルスでは咳嗽やくしゃみによる飛沫感染が主であり、飛沫予防策を行う。その他のRSウイルスなどではウイルスで汚染された手指による鼻粘膜や眼粘膜への接触感染が多く、接触予防策を行う。 かぜ症候群症例を診療する際には、原因微生物が不明な段階であることが多いが、飛沫感染のみならず接触感染する呼吸器感染ウイルスが多いため、病院感染対策にはマスク着用とともに手指衛生も重要である。


(3)皮膚科領域関連ウイルス

皮膚科領域に関連するウイルス感染症には、水痘・帯状疱疹、麻疹、風疹、単純ヘルペス感染症などがある。これらは皮膚症状を伴うが、神経系、リンパ組織、呼吸器などの臓器においても発症することが多い。これらのウイルスは感染力が強く、特に小児病棟などで病院感染上の問題となる。水痘−帯状疱疹ウイルスや麻疹ウイルスは特に感染力が強く空気感染する。風疹ウイルスは飛沫感染し、単純ヘルペスウイルスは接触感染する。 水痘−帯状疱疹ウイルスと単純ヘルペスウイルスは、回帰感染するヘルペスウイルスであり、多くのヒトが潜在感染している。病院感染対策はウイルスの種類に応じて、接触予防策、飛沫予防策、空気予防策を行う。


(4)眼感染ウイルス

ウイルスが原因の眼感染症にはアデノウイルスによる結膜炎・角膜炎やエンテロウイルスによる出血性結膜炎などがある。両者とも感染力が強く、学校や病院での集団発生を起こすことがある。手指を介しての接触感染が主であるが、患者が使用したタオルによる感染もある。したがって、手指衛生の徹底および患者が触れたリネン・器具の消毒などが重要となる。 病院感染対策として接触予防策を行う。


病院感染対策および消毒

上述のようにウイルスに対する感染対策はウイルスの種類により異なるが、 接触感染するウイルスの感染予防においては、手指衛生やノンクリティカル表面の消毒が重要である。ほとんど接触感染しないウイルスの場合は、気道分泌物などで汚染されたセミクリティカル器具の高水準消毒が通常どおり行われていればよい。ただしノンクリティカル器具がそれらのウイルスで特別に汚染されたと思われる場合に消毒薬を適用することもある。

インフルエンザウイルス、RSウイルス、パラインフルエンザウイルス、コロナウイルス、単純ヘルペスウイルス、水痘−帯状疱疹ウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルスなどはエンベロープを有するウイルスであり、消毒薬抵抗性はおおむね弱い。高水準消毒薬はもちろん、アルコール、次亜塩素酸ナトリウムによる確実な不活性化が期待できる9, 24, 25, 167)。 塩化ベンザルコニウムなど低水準消毒薬がこれらのウイルスに不活性化効果を示したとの報告もあるが、効果が不十分と思われる場合もある9, 35, 168)

一般にエンベロープの有るウイルスに対しては、2%グルタラールなどによる高水準消毒はもちろん、熱水消毒、次亜塩素酸ナトリウム、アルコール、ポビドンヨードが有効である。ノンクリティカル表面の消毒において、これらのウイルスを対象とする場合には、熱水消毒(80℃10分)、200〜1,000ppm次亜塩素酸ナトリウム、消毒用エタノール、70v/v%イソプロパノールを用いる。

ライノウイルス、ノロウイルス、アストロウイルス、A型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、およびポリオウイルス・エコーウイルス・コクサッキーウイルスなどのエンテロウイルスなどはエンベロープを有しないウイルスであるため消毒薬抵抗性はおおむね強いと推定される。ロタウイルス、アデノウイルスもエンベロープを有しないウイルスであるが、親油性であるため、それほど消毒薬抵抗性は強くないことが判明している。

ポリオウイルス・コクサッキーウイルス・エコーウイルスなどのエンテロウイルスの不活性化について、アルコールが長時間を要するという報告があるが、おおむねイソプロパノールより消毒用エタノールの方が効力が強い24, 25, 43, 167)。またこれらエンテロウイルスについて、低濃度のポビドンヨードが効力を示したが、繁用される高濃度は比較的長い時間を要したとの報告もあるため、注意が必要である35)。A型肝炎ウイルスの高い不活性化率を達成するには5,000ppm(0.5%)という高濃度の次亜塩素酸ナトリウムが必要であったとも報告されているが169)、この濃度には強い腐食性があり広く環境に用いることは避けるべきである。ノロウイルス、E型肝炎ウイルスは細胞培養ができないため消毒薬抵抗性に関する研究はあまり進んでいないが、ノロウイルスについては70℃の熱や1,000ppm次亜塩素酸ナトリウムによる消毒を示唆する報告がある170, 171)

一方、アデノウイルス、ロタウイルスについては、アルコール、200〜1,250ppm次亜塩素酸ナトリウム、ポビドンヨードなどの比較的良好な不活性化作用が報告されている9, 24, 25, 35, 43, 167, 172, 173)

水道水、アルコール製剤、クロルヘキシジン・トリクロサンなど抗菌成分含有石けんを用いた手洗いのA型肝炎ウイルスに関する研究では、減少率が80%(0.5ppm有効塩素水道水)、87%(70v/v%エタノール)、90%(4%クロルヘキシジンスクラブ)、92%(0.3%トリクロサン石けん)の範囲にあり、手洗い方法や抗菌成分による大きな差は認められていない174)

一般にエンベロープの無いウイルスの消毒は、高水準消毒薬または熱水(98℃15〜20分、多くの場合は80℃での10分洗浄でも可)によるか、念入りな洗浄、清拭により物理的にウイルスを除去した上で、仕上げとして500〜1,000ppm(特別な場合には5,000ppm)次亜塩素酸ナトリウム液、場合によりアルコールを用いる。洋式トイレの便座、フラッシュバルブ、水道ノブ、ドアノブなどはアルコールにより清拭する。ベッドパンはフラッシャーディスインフェクター(90℃1分間の蒸気)で処理する。エンベロープの無いウイルスを念頭に置いた手洗いは、流水による手洗いでウイルスを物理的に除去することが基本であり、手洗い後に補完として速乾性消毒薬を適用するかポビドンヨードスクラブで手洗いをすることもある。

ウイルス(血中ウイルスを除く)を対象とするノンクリティカル表面の消毒法を表48に示す。

表48 ノンクリティカル表面でのウイルスの消毒法
エンベロープを有する
ウイルス
熱水(80℃10分)
アルコール
200-1,000ppm次亜塩素酸ナトリウム液
エンベロープを有しない
ウイルス
熱水(98℃15〜20分、多くの場合は80℃での10分洗浄でも可)
500-1,000ppm(特別な場合には5,000ppm)次亜塩素酸ナトリウム液
場合によりアルコール



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