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IV 対象微生物による消毒薬の選択 7.プリオン182) プリオン病(prion disease)または伝播性海綿状脳症(transmissible spongiform encephalopathy: TSE)は、ヒトや動物の脳など中枢神経において致死性で亜急性の海綿状変性をもたらす。 ヒトにおけるプリオン病には、弧発性のクロイツフェルト・ヤコブ病(creutzfeldt–jakob disease: CJD)、医原性CJD、新変異型CJD(variant CJD、またはnew variant CJD)、遺伝性の家族性CJDなどがある。このうち医原性CJDとして、不活性化処理の不十分な乾燥脳硬膜や角膜の移植、下垂体より抽出した成長ホルモンの投与、脳組織に接触する器具などを介する伝播が報告され、病院感染上の問題となった。動物におけるプリオン病にはヒツジにおけるスクレイピー、ウシにおけるウシ海綿状脳症(狂牛病、bovine spongiform encephalopathy:BSE)などがある。 ヒトや動物は神経細胞にプリオン蛋白(prion protein)、つまり正常型PrPを有するが、プリオン病においては、正常型と立体構造が異なる異常型PrPが見られる。外来性感染因子としての異常型PrP、遺伝性の異常型PrP、その他未解明の要因が関与して、正常型PrPが異常型PrPに変化し、異常型PrPが増加して病変をもたらすと推測されている。 弧発性CJDやスクレイピーは古くから観察されていたが、1985年以降の英国でウシにBSEが発生し1992年まで急増した。その後1994年以降の英国においてヒトの若年層に 新変異型CJDが出現し、BSEのウシを摂取したことによりウシからヒトへ伝播した可能性が大きな社会問題となった183)。現在、日本を含む世界各国においてBSE発生の原因と思われる反芻動物由来飼料の反芻動物への使用などが厳しく制限され、また日本では食肉牛について屠殺時のBSE検査が行われている。 プリオンの感染性や伝播経路については、いまだ不明な部分が多く存在するが、BSEの流行国に生活した人々の献血は日本において不適とされており、また医薬品・化粧品などにおいてはウシなどに由来する原料の使用に厳しい制限が課されている。 CJDは移植や脳手術などによってしかヒトからヒトへ伝播しないため、CJD症例には標準予防策を行う。ただし、CJD症例に用いた後、ホルマリンと70%アルコールで消毒した深部脳波電極によるCJDの伝播なども報告されており184, 185)、またプリオンの感染性は酸化エチレンガス、グルタラールなどによる処理でも不活性化できないと報告されているため186)、CJD症例であるかその疑いのあるハイリスク者の脳、脊髄、眼組織などには特別な注意を払い、それらの付着したクリティカル器具・セミクリティカル器具には特別な処理方法を用いる。 日本のマニュアルは表50の処理法を示し187)、WHOによる勧告は表51の処理法を示している188)。なお、疫学的な観点から考察して判断された 実際的な処理法とその対象範囲として表52も提唱されている185)。 ノンクリティカル表面を介した接触伝播は特に報告されていない。手洗いは流水と石けんにより念入りに行う。 表50 クロイツフェルト・ヤコブ病診療マニュアルによる汚染材料の消毒法
表51 WHOの伝播性海綿状脳症に関する汚染除去法
表52 クロイツフェルト・ヤコブ病 プリオンに関するクリティカル、セミクリティカル器具の処置方法
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