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Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Vol.2 No.2 Summer 1997

患者や環境へのバンコマイシン耐性腸球菌定着の疫学

Hayden,M.K.,Nathan,C.,van Voorhis
J.,Matushek,M.,Slaughter,S.,Rice,T.,Weinstein,R.A.,Bonten,M.J.M.
Epidemiology of colonisation of patients and environment with vacomycin-resistant enterococci.
Lancet,348(14):1615-1619,1996.

バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)は病院感染の病原菌としてこの5年の間に急浮上してきた。しかし、VREの疫学は、まだほとんどわかっていない。そこでVREの様々な定着源の重要性を検討するために、臨床での患者と環境の調査を行った。

1995年4月12日から5月29日の間に、合衆国のCook County Hospital、集中治療室(MICU)に新たに人工呼吸器を装着して入院した全患者を対象に、身体部位(直腸、そけい部、上肢、咽頭、気管、胃)と環境表面(ベッド柵、横シーツ、血圧計のマンシェット、集尿容器、腸管栄養)の培養検査を毎日実施した。なお、直腸の培養はMICU入院中の人工呼吸器を装着していない患者にも全員行った。さらに、パルスフィールド・ゲル・電気泳動法にて、VREの菌型を分析した。

対象は38例の人工呼吸器装着患者を含む97例の入院症例であった。入院時のVRE定着は、人工呼吸器を装着していない患者よりも装着していた患者のほうに多かった[9例(24%)に対して3例(6%)、P<0.05]。また入院時VREの定着がみられた人工呼吸器装着患者9例のうち1例は、入院後に新たに別のVRE菌株が定着していた。入院時にVREが定着していなかった29例の人工呼吸器装着患者のうち41%にあたる12例の患者はMICU入院後にVREが培養された。入院後VREが培養で検出されるまでの中央値は5日間であった。入院後にVREが定着した13例の人工呼吸器装着患者のうち85%にあたる11例は、交差定着(cross-colonisation)であった。また、環境の培養1,294検体のうち12%にあたる157検体からVREが検出された。13例の患者病室がVREで汚染されていたが、そのうちわずか3例のみが入院後にVREが検出された。なお、262の分離株はパルスフィールド・ゲル・電気泳動法で20種類の特異的な型に分類された。

MICU入院時の菌定着状況とその後の交差定着は、日常的なVREの広がりに関する重要な要因である。胃、腸管あるいは皮膚の持続的なVRE定着や複数の型の存在、そして環境の汚染が、VREの伝播に関連している可能性がある。(訳:西岡みどり)

Carlisle Vol.2 No.2 p8-10 Summer 1997

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