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Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Vol.6 No.1 Spring 2001

医療廃棄物からの結核菌の伝播

Johnson, K. R., Braden, C. R., Cairns, K. L., et al.
Transmission of mycobacterium tuberculosis from medical waste.
JAMA, 284:1683-1688, 2000.

結核菌は通常肺結核患者の咳、くしゃみ、会話、歌により飛沫感染する。1997年、ワシントン州の結核発症率は10万人に5.4人の割合と低く、多剤耐性結核菌(少なくともイソニアジドとリファンピシンに耐性)はまれである。しかし、1997年5月から9月にかけて、ワシントン州の1つの医療廃棄物処理施設で働く従業員3人(28~55歳)の結核症例が報告された。3人とも活動型の結核患者との接触はなく、またツベルクリン皮膚テスト(ツ反)の記録はなかった。 

患者1はその医療廃棄物処理施設に4.5年従事したが、1996年12月に増殖性咳が出現し、1997年4月に肺炎と診断され、喀痰培養でイソニアジド耐性結核菌が検出された。患者2はその施設に6ヵ月間勤務し、1996年11月と12月の間に咳と発熱が出現し、患者1の診断結果を聞き、1997年6月にツ反を受けたところ、陽性で、喀痰培養では全薬剤感受性の結核菌が検出された。患者3は1997年7月末に増殖性の咳が出現し、ツ反は陽性で、喀痰培養でイソニアジド、リファンピシン、ストレプトマイシン耐性の結核菌が検出された。3人から分離された結核菌は異なる薬剤耐性パターンを示し、DNA fingerprintも異なっていた。 

その医療廃棄物処理施設の集水域からは10種の結核菌が分離されたが、その1つは患者3の結核菌と耐性パターンが同じで、DNA fingerprintパターンも同じであった。さらに、DNA配列ではまれな同じ変異を示した。この3人の患者と接触した全員を調査したところ、家族ではツ反の陽性者はいなかった。社会的接触者では過去にツ反歴がなく、薬物乱用者の1人が陽性であったが、胸部X線写真では異常はみられなかった。 医療廃棄物処理施設の29人の従業員(事務職員7人、廃棄物処理員22人)のうち13人がツ反で陽性であったが、胸部X線所見では正常であった。この施設は汚染した医療廃棄物を受け取り、寸断し、吹き飛ばし、圧縮し、最後に電熱処理にて不活化していた。施設の不備、不十分な従業員教育、呼吸保護装具不備により、汚染した医療廃棄物の処理過程で結核菌伝播がおきたと考えられた。

(訳:豊口禎子)

Carlisle Vol.6 No.1 p8-10 Spring 2001

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