セパシアによる薬剤汚染について
2002.05.13
4月19日、米国のFDAはmulti-dose(多数回使用)ボトルの吸入用薬剤(0.5% Albuterol Sulfate溶液)がバークホルデリア・セパシアによって汚染されたため発生した下気道感染症のアウトブレイク2件について言及し、医療従事者に注意を喚起しました。FDAは、医療従事者、特に呼吸器療法を行うスタッフやICUのスタッフはネブライザー用のmulti-doseボトルを開けるときや使用するときは毎回、適切な無菌操作に注意を払う必要があり、特に、ボトルの先端がネブライザーの表面などに触れることを避けるべきであるとしています。
バークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)は、ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌であり、自然界や病院内の湿潤環境に常在する平素無害菌です。消毒薬に対して強い抵抗性を示す場合のある細菌としてセラチアとともに代表的なものであり、消毒薬、軟膏、点眼薬、石けん、水道水、透析液などから検出されることがあります。消毒薬を含め市販の薬剤が開封前からセパシアによって汚染されていたという事例も国内外で報告されていますが、多くの場合は開封後の使用時における汚染が原因と思われます。
また、抗菌薬についても多剤耐性を示す場合があり、易感染患者の気道や血流内に伝播した際には重大な病院感染症に発展します。 セパシアの定着や感染の多くはICU患者や呼吸器関連器具を使用している患者において発生し、欧米においては特に嚢胞性線維症(Cystic fibrosis)患者におけるセパシア感染が頻繁に報告されています。
国内においてもセパシアによる病院感染のアウトブレイクが報告されており、近年の例では輸液(ヘパリン)の薬瓶を患者間で使い回したことが原因で敗血症が多発した可能性が高いとされています。セパシアの伝播様式はセラチアとほぼ同様であり、薬剤汚染のほか、手指、器具・物品、湿潤環境を介した患者への伝播が考えらます。
これらの感染経路を遮断するためには、手洗いの徹底、薬液の調製・使用時における衛生的取り扱い、器具・物品の適切な洗浄・消毒が肝要となります。
詳しくはY’s Letter No.1 「セラチアによる病院感染について」をご覧下さい。
<参考文献>
http://www.fda.gov/cder/drug/advisory/albuterol.htm
http://www.yoshida-pharm.com/carlisle/0103/review03.html
http://jcm.asm.org/cgi/reprint/34/3/584.pdf
http://www.yoshida-pharm.com/carlisle/0101/review03.html
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=PubMed&list_uids=7536401&dopt=Abstract
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=PubMed&list_uids=7247124&dopt=Abstract
http://www.yoshida-pharm.com/us/1998/981106.htm
(IV-2-2-1) ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌(NF-GNR)