EURO Update
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欧州(Eurosurveillanceより)
2002/06/13
イタリアにおける腸球菌のバンコマイシン耐性
June 13, 2002 Issue 24
High level of vancomycin resistance in invasive strains of Enterococcus faecalis and Enterococcus faecium in Italy: initial results from the national AR-ISS antibiotic resistance project.の要旨
High level of vancomycin resistance in invasive strains of Enterococcus faecalis and Enterococcus faecium in Italy: initial results from the national AR-ISS antibiotic resistance project.の要旨
http://www.eurosurv.org/2002/pfp/020613_pfp.htm
http://www.eurosurveillance.org/index-02.asp
2001年6月に開始されたイタリアの全国的サーベーランス(AR-ISS)における最初のレポートによると、2001年6月1日から2002年1月31日までに集められた血液培養分離の腸球菌459株、Enterococcus faecalis(324株)とEnterococcus faecium、(120株)などの内、5.9%が3種以上の抗菌薬に多剤耐性であった。バンコマイシン感受性のテストをされた株(Enterococcus faecalis 272株とEnterococcus faecium 105株)の内、6.6%はバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)であり、その80%が多剤耐性であった。Enterococcus faecalis においては1.8%、Enterococcus faecium においては19.0%がバンコマイシン耐性であった。
イタリア以外の欧州における平均データではEnterococcus faecalis において0.06%、Enterococcus faecium において3.80%がVREと報告されており、Enterococcus faeciumの23.8%がVREと報告されているギリシャとならんで、イタリアはバンコマイシン耐性腸球菌の分離頻度が高い欧州国であると思われる。
Eurosurveillance 2002.06.13/ Yoshida Pharmaceutical Co Ltd: 2002.06.17
腸球菌はヒトの腸管常在菌であり健常人には通常無害ですが、病院内の易感染患者においては血流感染などを起因することがあり、特にバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)は有効な抗菌薬療法の選択肢が少ないため、重要な病院感染起因菌として注目されています。腸球菌におけるバンコマイシン耐性はEnterococcus faecalis よりもEnterococcus faecium において多く検出されており、耐性のレベルはバンコマイシン耐性をもたらす遺伝子、vanA、vanB、vanCによって異なることが判明しています。VREによる病院感染は欧州よりも米国において蔓延しており、米国の血流感染のデータ1)ではEnterococcus faeciumの50%、ICU内病院感染のデータ(NNIS)2) ではEnterococciの26.3%がVREと報告されています。日本においても近年、入院患者などからVREが検出されていますが、その分離頻度は欧米に比べるとかなり低いレベルにとどまっています。3) とはいえ日本においてもバンコマイシンを慎重に使用することやVRE患者には接触予防策を行い病院内の伝播を防止することが重要と思われます。4) なおVREは日本の感染症予防法上、衛生当局への分離報告が必要な4類感染症です。
<参考>
http://www.cdc.gov/ncidod/hip/NNIS/2001nnis_report.PDF
http://202.255.237.164/janis/idsc/kihou/2000_3/kensa10-12.htm
http://www.cdc.gov/mmwr//preview/mmwrhtml/00039349.htm