Y's Square:病院感染、院内感染対策学術情報 > 感染対策学術情報 > 医療関連感染情報季刊誌より(Carlisle) > Review > 感染起因菌 > MRSA > ナーシングホームでのメチシリン耐性黄色ブドウ球菌に関連した有害事象
Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Vol.7 No.2 Summer 2002

ナーシングホームでのメチシリン耐性黄色ブドウ球菌に関連した有害事象

Paul, Drinka, Todd, Faulks, Cathy, Gauerke, et al
Adverse events associated with Methicillin-Resistant Staphylococcus aureus in nursing home.
Arch. Intern. Med., 161:2371-2377, 2001.

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は、ナーシングホームでは関心事であり、MRSAが発生するとそこで働く職員は困惑する。隔離予防策を実施する期間も明確でない。MRSAによる有害事象には医療訴訟などはもちろん、伝播や感染も含まれる。本研究では、721床のWisconsin Veterans Homeで培養された645検体について、MRSAの感染部位、重症度、感染数を69ヵ月間追跡調査した。さらに、初回分離の検体はすべてパルスフィールド電気泳動(PFGE)を実施し、伝播の有無を調査するために統計学的群解析を実施した。

MRSA感染は、67件認められた。その内訳は、カテーテル挿入の尿路感染が14症例、カテーテル挿入のない尿路感染は6症例、敗血症は3症例であった。加えて、呼吸器感染は14症例、創感染は30症例であった。その多くは複数菌感染であったが、MRSAが罹患率または感染率にどの程度寄与しているかを確認することは困難であった。敗血症の3症例のうち2症例では遺伝子鎖が同一パターンであり、残りの1症例のパターンはそれらと4バンド変化していた。 PFGEは初回分離の71検体全てに実施され、21種類の遺伝子パターンを認めた。統計学的群解析により遺伝学的に同一な鎖は13群確認され、同一期間、同一区域で集中発生していることが確認された。その他のケースでは、他とは異なったPFGEパターンが同時期に離れた区域で認められたが、それらは同一起源であると考えられるけれども疫学的な関係を見出すことはできなかった。

MRSAによる感染率は比較的低率であるが、特に肺炎などではナーシングホームでの感染原因は調査されていない。本研究の統計学的解析では、伝播による集中発生が確認された。ナーシングホームの職員は、重症感染に対して経験的治療を実施する場合には、MRSAを考慮すべきである。われわれは以下のことを推奨する。(1)耐性菌を減らすために局所投与も含めて抗生物質を適正に使用すること、(2)MRSA感染を診断し的確な抗生物質治療を実施するために、分泌物を採取し追跡培養を実施すること、(3) 入居者の中には保菌者も含まれるため、標準予防策を広く適用すること、(4)伝播を起こさないために、MRSAを保菌する入居者の活動度や理解力などを個々に評価し、ケアプランを立てること。

(訳:野口浩恵)

Carlisle Vol.7 No.2 p8-10 Summer 2002

関連サイト