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感染症対策速報
2003/05/12
最新情報4:重症急性呼吸器症候群(SARS)
2003.05.12
重症急性呼吸器症候群(SARS) に関する5月6日~5月10日の主な情報は以下のとおりです。
- JAMAが5月6日、カナダにおけるSARS144症例の臨床経過に関する報告を電子版として掲載しました1)。
- The Lancetの5月7日電子版に、致死率、潜伏期間などSARS症例における疫学的データの報告が掲載されました2)。
- WHOは5月7日、それまでのデータに基づく推計値として、SARSの致死率は14~15%であり、潜伏期間は最大10日間であることを報告しました3)。それによると年齢別の致死率は24歳以下:1%未満、25~44歳:6%、45~64歳:15%、65歳以上:50%超とのことです。
- MMWR(CDC)とWER(WHO)はそれぞれ5月9日号で、シンガポールにおけるsuper spreader(大量拡散者)5例の詳細とシンガポール政府による厳重な国内検疫体制に関する報告を掲載しました4)5)。
- The Lancetの5月9日電子版に、臨床経過とウイルス量の報告が掲載されました6)。それによるとウイルス量は10日目にピークとなるとのことです。
- 上記の他、The Lancetの5月10日号にはSARS virusにおける遺伝子変異、SARS治療法のプロトコル例示などの報告が掲載されています。
http://www.thelancet.com/journal/vol361/iss9369/contents - SARS集団発生のあった香港の集合住宅で、小動物の糞からSARSウイルスが検出されたとの報道があります7)。
<行政情報・統計>
- 厚生労働省は5月2日、4月4日通知による「SARSの所見がある者」に加えてその他のSARS可能性例についても「SARSの所見がある者」として知事から厚生労働大臣への通報対象(新感染症)としました8)。
- WHOは5月8日、中国の天津、内モンゴルと台北について、重要でない渡航の延期を勧告しました9)。
- 外務省は5月8日付で、中国天津市、内モンゴル自治区と台湾についての危険情報を「渡航の是非を検討して下さい」に引き上げ、フィリピンについて「十分注意して下さい」との危険情報を発出しました10)。
- 厚生労働省は5月8日付で、SARS疑い例及び可能性例の届出のための症例定義を改訂し、可能性例の症例定義に「SARS疑い例のうち、SARSコロナウイルス検査の一つ又はそれ以上で陽性となった者」を追加しました11)。
- 厚生労働省は5月9日付で、SARS virusの消毒法について通知しました12)。消毒用エタノール、70v/v%イソプロパノール、速乾性手指消毒薬、1,000ppm次亜塩素酸ナトリウム、10%ポビドンヨード、2~3.5%グルタラール、0.3%過酢酸、80℃10分熱水などが例示されています。これらのうち10%ポビドンヨードは環境消毒には適しません。また、セミクリティカル器具について通常通り0.55%フタラールで消毒することは可能と思われます。
- WHOは5月10日現在、伝播地域(Areas with recent local transmission)以下のように指定しています13)。Aは輸入例の直接近接者にのみ伝播、Bは知られている近接者のみに伝播、Cは知られている近接者以外にも伝播を示しています。
A: なし
B: トロント、シンガポール、マニラ
C: 北京*、広東*、香港*、山西*、台北*
不明: 内モンゴル*、天津*
* 重要でない渡航の延期勧告がWHOより出ている地域 - 外務省は5月10日現在、以下の危険情報を出しています10)。
「渡航の是非を検討して下さい」 - 香港、広東省、北京市、山西省、天津市、内モンゴル自治区、台湾
「十分注意して下さい」 - 中国全土、マカオ、シンガポール、トロント、ウランバートル市、フィリピン - 5月10日にWHOが報告したSARS症例累積数(可能性例)は30カ国からの7296例で、526例が死亡、3087例が既に回復と報告されています14)。厚生労働省の5月9日17時の公表では、日本の疑い例はこれまでに全例が否定されています15)。
5月5日までの情報については、下記リンクをご覧下さい。
http://www.yoshida-pharm.com/information/dispatch/dispatch24.html
2003.05.12 Yoshida Pharmaceutical Co.,Ltd.
<参考>
http://jama.ama-assn.org/cgi/reprint/289.21.JOC30885v1.pdf
http://image.thelancet.com/extras/03art4453web.pdf
http://www.who.int/csr/sarsarchive/2003_05_07a/en/
http://www.cdc.gov/mmwr/PDF/wk/mm5218.pdf
http://www.who.int/wer/pdf/2003/wer7819.pdf
http://image.thelancet.com/extras/03art4432web.pdf
http://www.asahi.com/special/sars/TKY200305080220.html
http://www.mhlw.go.jp/topics/2003/03/tp0318-1b27.html
http://www.who.int/csr/sarsarchive/2003_05_08/en/
http://www.pubanzen.mofa.go.jp/
http://www.mhlw.go.jp/topics/2003/03/tp0318-1b30.html
http://www.mhlw.go.jp/topics/2003/03/tp0318-1b31.html
http://www.who.int/csr/sarsareas/2003_05_10/en/
http://www.who.int/csr/sarscountry/2003_05_10/en/
http://www.mhlw.go.jp/topics/2003/03/tp0318-1c.html