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Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Vol.7 No.4 Winter 2003

術後黄色ブドウ球菌感染予防のための鼻腔内ムピロシン投与

Perl, T. M., Cullen J. J., Wenzel, R. P., et al.
Intranasal Mupirocin to Prevent Postoperative Staphylococcus aureus Infections.
N. Engl. J. Med., 346:1871-1877, 2002.

黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)を鼻腔内に保菌する患者は、S. aureusによる手術部位感染のリスクが高いことが報告されている。ムピロシン軟膏を用いて鼻腔内のS. aureus保菌率を減少させることにより、術後のS. aureus感染を予防できる可能性が考えられる。今回、ムピロシン軟膏による鼻腔内治療が手術部位のS. aureus感染率を減少させ、さらには他の感染も予防できるかについて検討するため臨床試験を行った。試験は2%ムピロシン軟膏とプラセボ軟膏を無作為に割付け、二重盲検で実施した。対象患者は一般外科、婦人科系、神経系または心胸郭の手術を施行した登録患者4,030例であり、脱落例166例を除く3,864例においてintention-to-treat解析を行った。

手術部位のS. aureus感染率は、全体でみるとムピロシン軟膏で治療を受けた群は2.3%であり、プラセボ対照群は2.4%と同程度であった。しかし、試験を完了した3,864例中891例(23.1%)は前鼻孔にS. aureusを保菌していると同定された患者であり、そのうち444例はムピロシン軟膏の治療を、447例はプラセボ治療を受けていた。これらの患者のち、手術部位以外も含めてS. aureusに感染したものは、ムピロシン軟膏治療群では4.0%であったが、プラセボ対照群では7.7%に及んでいた(感染のオッズ比 0.49;95%信頼区間  0.25~0.92;p=0.02)。
S. aureusの鼻腔内保菌は一般的であり、保菌者は菌を保有していない人に比し、侵襲性のある処置の後にはS. aureus感染のリスクが高い。今回の大規模試験でムピロシンの予防的鼻腔内塗布は、試験全体ではS. aureusによる手術部位の感染率を有意に減少させなかったが、S. aureus保菌患者ではS. aureusによるすべての感染率を有意に減少させることが認められた。  

(訳:木津純子)

Carlisle Vol.7 No.4 p8-11 Winter 2003

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