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Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Vol.8 No.3 Autumn 2003

ノロウイルス集団感染の二つの疫学的パターン:イングランドとウェールズにおける調査(1992-2000年)

Lopman, B.A., Adak, G.K., Reacher, M.H., et al.
Two epidemiologic patterns of Norovirus outbreaks: surveillance in England and Wales, 1992-2000.
Emerg. Infect. Dis., 9:71-77, 2003.

ノロウイルス(ノーウォーク様ウイルス)は、西ヨーロッパで最も一般的にみられる感染性胃腸炎の原因ウイルスである。また、西ヨーロッパや北アメリカにおける感染性胃腸炎の集団発生の原因ウイルスでもある。感染経路は経口感染であり、感染患者の糞便や吐物を通してヒトからヒトへの感染、あるいはウイルスに汚染された食物や水の摂取による感染が主である。一般的な症状は嘔吐であり、全体的に症状は軽く、罹病期間が短いという特徴がある。いずれの年齢においても発病するが5歳未満の小児の発病率が最も高い。しかし、ノロウイルスによる最も大きな影響は、介護施設に入居している高齢者における集団発生の経済的影響であると考えられている。

英国の公衆衛生検査サービスでは、1992年から2000年のイングランドとウェールズにおける感染性胃腸炎の集団発生事例に関するデータをもとにして、ノロウイルスの疫学的調査を行った。なお、データは、十分な調査がなされている、年齢差がない、信公衆衛生検査サービスの調査によると、イングランドとウェールズにおいて、1992年から2000年の9年間で、5,241件の感染性胃腸炎の集団発生事例があった。このうち、検査でノロウイルスによると確定したものは1,877件であり、集団発生例全体の36%を占めた。ノロウイルスによると確定した1,877件の発生場所については、79%がヘルスケア施設(病院40%、介護施設39%)であった。その他の発生場所としては、ホテル7.8%、飲食店6%、学校4%、その他3.9%であった。1,877件で計57,060人に発生し、死亡者は43人であったが、いずれもヘルスケア施設(病院24人、介護施設19人)での患者であった。

ヘルスケア施設での集団発生は、この高死亡率に加え、冬にピーク(p<0.0001)がみられること、罹病期間が長いこと、集団発生の規模は小さいこと、ヒトからヒトへの感染がほとんどであり、ウイルスに汚染された食物の摂取による感染はほとんどないこと、などの特徴がみられた。

以上より、入院患者や介護施設入居者におけるノロウイルス感染は、重篤になることがあり、十分な注意が必要であることが示唆された。これらヘルスケア施設における集団発生のパターンにおいては、患者の状況、ウイルスのタイプ、疫学的パターンに影響を与えるような環境因子が相互に関与していることが示唆される。

(訳:巨勢典子、木津純子)

Carlisle Vol.8 No.3 p8-11 Autumn 2003

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