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Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Vol.8 No.3 Autumn 2003

集団感染がない状態における多剤耐性腸内細菌科の細菌のサーベイランスは効果的な感染制御戦略となるか?

Gardam, M.A., Burrows, L.L., Kus, J.V., et al.
Is surveillance for multi-drug-resistant enterobacteriaceae an effective infection control strategy in the absence of an outbreak?
J. Infect. Dis., 186:1754-1760, 2002.

多剤耐性腸内細菌科の細菌(MDRE)は病院(院内)感染の重要な原因菌(起因菌)の一つであるが、本菌による集団感染がない環境でのMDRE感染の伝播を予防する試みとしてのスクリーニング効果についての検討はなされていない。今回、カナダのトロントジェネラル病院の多臓器移植部門で、1999年4月から2000年9月末にかけて実施された研究を紹介する。

臨床データを収集し、そして臨床分離株についてパルスフィールドゲル電気泳動、プラスミドおよびインテグロン分析(インテグロンとは薬剤感受性と薬剤耐性を媒介するもの。たとえば、腸管出血性大腸菌においては薬剤耐性を媒介する)が実施された。標準的な予防措置が要求された時を除いて、菌が定着した患者は検出されなかった。287人の患者のうち69人(24%)にMDREが定着し、そして69人のうちの6人(9%)に感染が認められた。また、69人のうちの66人で定着した菌が分離されたのが特徴であった。患者間でのMDRE感染の伝播は認められなかった。検討しなかった患者から分離された臨床株の分析から、臨床的な感染を導く伝播がないことが示唆された。また、サーベイランスプログラムに要する年間予算は、1,130,188.44カナダドルと計算された。

結論として、流行のない状態において、MDREのサーベイランスの実施は患者群の感染のコントロールまたは臨床感染の予測面で若干利益をもたらすか、あるいはもたらさないことから、必要とする予算を考慮したとき若干課題が残ると考えられる。しかし、定着した患者のための隔離またはバリアー措置の使用は集団感染の管理に対して有益な役割を担う可能性もあり、集団感染が検出されなかった場合で、日常的な臨床分離株に対してMDREのサーベイランスを実行することは、より効果的な手段になるかもしれない。

(訳:坂上吉一)

Carlisle Vol.8 No.3 p8-11 Autumn 2003

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