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病院感染対策のポイント
別表1 ノンクリティカル器具・物品・環境表面に用いる消毒薬
[一般的注意事項]
消毒薬は被消毒物の材質・形状・用途などに適したものを選択する。
通常は清拭により汚染の物理的な除去も兼ねて行う。
刺激性や毒性のある高水準消毒薬や滅菌剤は原則として用いない 注1)。
食器・リネンなどは原則として熱水洗浄を行う。
消毒薬に浸漬する場合には有機物を除いたあとに原則として30分浸漬する。
[通常選択する消毒]
被消毒物 | 消毒薬と濃度 |
---|---|
乾燥表面 主にMRSAなど一般細菌、酵母菌が対象 |
熱水(80℃10分) 0.1-0.2%塩化ベンザルコニウム液 0.1-0.2%塩化ベンゼトニウム液 0.1-0.2%塩酸アルキルジアミノエチルグリシン液アルコール 200-1,000ppm次亜塩素酸ナトリウム液 |
湿潤表面 主に緑膿菌など親水性グラム陰性菌が対象 |
熱水(80℃10分) アルコール 200-1,000ppm次亜塩素酸ナトリウム液 |
食器 |
熱水(80℃10分) 100-1,000ppm次亜塩素酸ナトリウム液 |
リネン |
熱水(80℃10分) 100-1,000ppm次亜塩素酸ナトリウム液 0.1-0.2%塩化ベンザルコニウム液 0.1-0.2%塩化ベンゼトニウム液 0.1-0.2%塩酸アルキルジアミノエチルグリシン液 |
[特定の微生物を対象とする場合]
対象微生物 | 消毒薬と濃度 |
---|---|
インフルエンザウイルスなどエンベロープのあるウイルス注2) |
熱水(80℃10分) アルコール 200-1,000ppm次亜塩素酸ナトリウム液 |
HBVなど血中ウイルス (エンベロープあり) |
熱水(98℃6分、多くの場合は80℃での10分洗浄でも可) 1,000ppm次亜塩素酸ナトリウム液(血液自体の消毒は5,000-10,000ppm) アルコール |
糸状菌 |
熱水(80℃10分) 500-1,000ppm次亜塩素酸ナトリウム液 アルコール |
結核菌 |
熱水(80℃10分) アルコール 0.5-1%クレゾール石ケン液 注3) 0.2-0.5%塩酸アルキルジアミノエチルグリシン液 1,000ppm以上の次亜塩素酸ナトリウム液(低濃度では無効) |
ポリオウイルスなど エンベロープのないウイルス 注2) |
熱水(98℃15~20分、多くの場合は80℃での10分洗浄でも可) 500-1,000ppm(特別な場合には5,000ppm)次亜塩素酸ナトリウム液 場合によりアルコール |
芽胞 |
徹底的な洗浄・清拭 特別な場合には5,000ppm次亜塩素酸ナトリウム液 |
注1)
:次亜塩素酸ナトリウムをノンクリティカル器具・物品・環境の清拭に用いる場合には、原則としてごく小範囲に使用し広範囲には使用しない。
注2)
:ウイルスはエンベロープのあるウイルスとエンベロープのないウイルスに区別することができ、一般にエンベロープのあるウイルスは消毒薬抵抗性が比較的弱いといわれている。
注3)
:クレゾール石ケン液は水質汚濁防止法、下水道法によりフェノール類として5ppmの排水中濃度規制があることに注意して用いる。
これらの表は下記の文献の一部を要約し、さらに改変したものです。
厚生省保健医療局結核感染症課監修,小林寛伊編集:消毒と滅菌のガイドライン,へるす出版,東京,1999.