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Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Vol.8 No.4 Winter 2003

40年におよぶ消毒不全:塩化ベンザルコニウム汚染によって引き起こされた注射後Mycobacterium abscessus感染症のアウトブレイク

Tiwari, T.S.P., Ray, B., Jost, K.C. Jr., et al.
Forty years of disinfectant failure:Outbreak of postinjection Mycobacterium abscessus infection caused by contamination of benzalkonium chloride.
Clin. Infect. Dis., 36:954-962, 2003.

塩化ベンザルコニウムは第四級アンモニウム塩で、1935年より消毒薬として一般的に使われ始めた。その効果は広く認識されてきたが、1958年には、塩化ベンザルコニウム汚染によるPseudomonasの院内菌血症のアウトブレイクが報告されている。その後もこうしたアウトブレイクが報告され、塩化ベンザルコニウムは環境消毒への使用のみが推奨されるに至った。それにもかかわらず、塩化ベンザルコニウムは生体消毒薬として使われ続け、さらなる感染症のアウトブレイクが生じた。

1999年7月23日、感染症医が関節と軟組織におけるMycobacterium chelonae/ Mycobacterium abscessus感染患者が6例いるとテキサス衛生局(オースティン)に報告した。これらの患者は、すべて過去に他の開業医の診察を受けており、4ヵ月以内に関節痛、関節炎、踵骨棘に対して関節内または周囲へのステロイド剤注射による治療を受けていた。

本研究ではこのアウトブレイクを調査することとした。1999年4月1日から7月31日までに医師の診察を受け、関節内または周囲にステロイド剤注射を受けた患者58人を対象に調査を実施したところ、12人の患者(21%)からMycobacterium abscessusによる注射後感染が認められた。なお、注射後感染を生じた患者群と感染を生じなかった患者群との間で患者背景に有意差は認められなかった。Mycobacterium abscessusは 10人の患者から入手した関節液あるいは関節周囲の軟組織から培養できた。また、環境試料を培養し、電気泳動やRAPD-PCRによって隔離培養しながら症例患者から回収した隔離培養と比較した。28の環境試料のうち、塩化ベンザルコニウムの希釈溶液を含んでいる4つの環境試料からMycobacterium abscessusが検出された。Mycobacte-rium abscessusの臨床株と環境から得た株はRAPD-PCRによって区別できなかった。さらに、症例患者の株は塩化ベンザルコニウムに対して耐性を示していた。以上より、生体消毒薬として塩化ベンザルコニウムは使用すべきではないことが示唆された。

(訳:渡辺裕子、木津純子)

Carlisle Vol.8 No.4 p8-11 Winter 2004

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