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Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Vol.9 No.2 Summer 2004

香港の市中病院における医療従事者間に発生した重症急性呼吸器症候群(SARS)のアウトブレイク

Ho, A.S., Sung, J.J.Y., Chan-Yeung, M.
An outbreak of severe acute respiratory syndrome among hospital workers in a community hospital in Hong Kong.
Ann. Intern Med., 139:564-567, 2003.

 コロナウイルス関連の重症急性呼吸器症候群(SARS)は中国南部地域から世界へと急速に拡散した疾患で、香港でのアウトブレイクは2003年2月に中国人医師が香港のホテルに宿泊したことに端を発した。香港市中病院の医療スタッフにおけるSARSのアウトブレイクとその家族へのウイルス伝播の調査を行った。

 市中病院は529床、1,312人の職員からなり、アウトブレイクの間、危険な部門や同地域の病院から患者を直接受け入れた。2003年3月25日から5月5日までのSARS疾患定義に適合した40人の感染スタッフの記録を調査した。3月25日から6週間のスタッフ発病率は、1,000人中第一週6.1人、第二週10.2人、第三週8.8人、第四週2人、第五~六週は0人で、発生率はヘルスケアー助手8%、医師5%、看護師4%の順であった。患者と直接接触したスタッフ32人中、11人はSARS疑い患者と接触し、21人はSARSが疑われなかった患者と接触して感染した。症状発現から入院までの平均期間は、2.7日であった。

 アウトブレイクは4つの病室が中心で、A病室に入院した2人の患者から9人のスタッフが感染、他院からB病室に入院した1患者が3日後に発症、C病室に移された(この患者は医療スタッフ16人および患者8人と接触)。A病室が閉鎖された時、D病室にはSARS患者と一緒にいたA病室の患者が移された。このスタッフは患者と密接に接触したため発生率が高くなったと思われる。また、発症した3人の清掃員は患者と直接接触しておらず、間接的な伝播と考えられる。8人はSARS隔離室でSARS患者と接触したが、誰も感染しなかった。

 3月下旬、感染管理の評価をするため、SARS患者の接触リスクに従って超ハイリスク、ハイリスク、低リスク区域に分類し、それぞれ防護用具(マスク、ガウン、手袋、メガネ)をタイプ別に供給した。4月14日に2つの隔離室はSARS専用とした。4月22日以降、スタッフの新たな感染は認められなかった。また、感染したスタッフはマスクを使用していたと主張したが、フィット試験をしていなかったことが原因と考えられる。本調査では病院スタッフから、その家族または友人に感染させなかったことも明らかとなった。

(訳:白石 正)

Carlisle Vol.9 No.2 p8-11 Summer 2004

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