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Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Vol.9 No.3 Autumn 2004

輸血による変異型クロイツフェルトヤコブ病の感染の可能性

Llewelyn, C.A., Hewitt, P.E., Knight, R.S.G., et al.
Possible transmission of variant Creutzfeldt-Jakob disease by blood transfusion.
Lancet, 363:417-421, 2004.

 変異型クロイツフェルトヤコブ病(vCJD)は新しいヒトプリオン病であり、牛海綿状脳症いわゆる狂牛病(BSE)に罹患したウシの摂取が原因であると推測されている。また、CJD患者からの移植(硬膜、角膜)、CJD患者由来のヒト下垂体ホルモン投与、病原体に汚染された医療用具を使用した神経外科手術による感染など、医原性のものも指摘されている。疫学調査において、孤発性CJDについては輸血を介した感染は否定されているが、vCJDについては不明である。本研究では輸血によるvCJD感染の可能性について明らかとすることを目的とした。

 英国CJD調査部が、血液センターや病院の記録の中から全てのvCJD患者(疑いのある患者も含めて)のケースを英国血液サービスに報告した。輸血のレシピエントとドナーの氏名を報告してデータベース化し、レシピエントについては、死亡日および死因も明示した。1982~2002年の間に、献血できる年齢になったvCJD患者135人のうち15人が献血をし、その血液成分が入った輸血を48人が受けたことがわかった。

 この中の一人である62歳の男性は、1996年手術の際に赤血球を5単位輸血された(24歳のドナーは3年4ヵ月後にvCJDを発症し、vCJDの病理学的確立がなされた2000年に亡くなっている)。この患者は、輸血から6.5年経ってから、うつ、歩行困難などの症状が出現し始め、6ヵ月後には認識機能障害、失行、深部腱反射亢進などが認められ、13ヵ月後には、手足の間代性筋けいれん発作を起こし死亡した。死亡診断書は痴呆とされていたが、CJD調査部による再調査で、剖検材料からプリオン蛋白遺伝子の129コドンでのメチオニンホモ接合体の検出、脳への2Bプリオン蛋白の沈着などvCJDの特徴的な兆候が確認された。

 これらの結果から、輸血によるvCJD感染の可能性を指摘することができた。一方、BSEを人畜共通感染と仮定すると、レシピエントの感染はBSEに汚染された食品の摂取にかかわっている可能性もある。しかしながら、本患者の年齢は大部分のvCJD症例の年齢をはるかに超えており、統計解析によれば、輸血感染の可能性のないレシピエントにおいて、vCJD発症が観察される機会は、1万5千人から3万人に1人とされている。

(訳:石井絵美、木津純子)

Carlisle Vol.9 No.3 p8-11 Autumn 2004

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