Y's Square:病院感染、院内感染対策学術情報 > 感染対策学術情報 > 医療関連感染情報季刊誌より(Carlisle) > Review > 感染起因菌 > その他の微生物 > 重症急性呼吸器症候群の可能性がある患者におけるコロナウイルスの排出パターン
Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Vol.9 No.4 Winter 2005

重症急性呼吸器症候群の可能性がある患者におけるコロナウイルスの排出パターン

Cheng, P.K.C., Wong, D.A., Tong, L.K.L., et al.
Viral shedding patterns of coronavirus in patients with probable severe acute respiratory syndrome.
THE LANCET, 363:1699-1700, 2004.

 重症急性呼吸器症候群(SARS)はSARS関連コロナウイルスと称する新規コロナウイルスが原因で発生すると考えられている。われわれは診断の改善および感染制御のために、SARSコロナウイルスからのウイルスの排出について検討した。

 2003年2月24日から6月24日まで、のべ1,041人の患者から2,134件の試料(鼻咽頭の吸引試料、糞便、他の上部呼吸器官の標本、血清、尿および下部呼吸器官の標本)を採取し、逆転写酵素PCRを実施した。鼻咽頭の吸引で789件中355件(45%)、糞便で540件中150件(28%)、他の上部呼吸器官の標本で489件中116件(24%)、血清で89件中20件(23%)、尿で198件中6件(3%)、下部呼吸器官の標本では29件中22件(76%)でSARSコロナウイルスRNAが陽性を示した。陽性率は鼻咽頭吸引の間では、発症後6~11日目でピークに達した〔149件中87件(58%)から62件中37件(60%)であった〕。また、9~14日目の糞便では陽性率は22件中15件(68%)から37件中26件(70%)と高い値であった。全体として、ウイルス負荷は、患者が病院内でケアされている期間では、発症から12~14日後にピークに到達した。大部分の患者はその時点では病院内でケアされているので、発症より12~14日後に認められる最大のウイルスの排出は、医療従事者が感染する傾向が高いことを示唆している。

 なお、発症から最初の数日間におけるウイルス排出率が低いことは、SARS患者の早期の隔離手段が予防に効果的であることを意味していると考えられる。われわれはSARSコロナウイルスRNAの検出率は体からの種々の分泌物と病気の経過日数でかなり異なることを明らかにした。下部呼吸器官の標本は最も陽性率が高かったとはいえ、ウイルスを含んだ試料の大きさが小さく、飛沫が発生しやすいことから、飛沫による医療従事者への感染リスクがあった。

 糞便中におけるウイルスの負荷が鼻咽頭の吸引中におけるよりも非常に高いとする見解は、糞便がSARSコロナウイルスの伝播に重要な役割を担うかもしれないという仮説と一致する。糞便中における長期間のSARSコロナウイルスRNAの検出は、SARSから回復した患者が排出後に感染する可能性が高くなる。われわれのデータはSARSのための適切な試験戦略および伝播制御手段の発展に役立つだろう。

(訳:坂上吉一)

Carlisle Vol.9 No.4 p8-11 Winter 2005

関連サイト