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Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Vol.10 No.2 Summer 2005

HICPAC/SHEA-対立するガイドライン:標準療法は何か?

Jackson, M., Jarvis, W., Scheckler, W.
HICPAC/SHEA―Conflicting guidelines:What is the standard of care?
Am. J. Infect. Control., 32:504-511, 2004.

アリゾナ州フェニックスで開催された第31回APIC(The Association for Professionals in Infection Control and Epidemiology)教育・国際会議において、2つのガイドラインに関する議論が行われた。1つは2003年に発表された多剤耐性ブドウ球菌と腸球菌の病院感染予防のためのSHEA(Society for Healthcare Epidemiology of America)ガイドラインであり、もう一つは隔離予防措置のためのHICPAC(Healthcare Infection Control Practices Advisory Committee)ガイドラインである。両ガイドラインの目的は、いずれも多剤耐性菌感染の減少であるが、方法論が異なっている。すなわち、SHEAガイドラインは、積極的に検査培養することを推奨し、HICPACガイドラインにおいては、個々の患者における必要性とリスクを評価した上で、必要時に臨機応変に培養を行うべきであると主張している。

HICPAC委員会のメンバーであるJackson医師は、EBMにおけるエビデンスモデルは研究の質により5段階に分類し判断するが、HICPACガイドラインにおいては、CDC勧告のヒエラルキーがあると指摘している。CDC勧告のカテゴリーは、ⅠA、ⅠB、ⅠC、Ⅱ、勧告なし、と分類しているが、ガイドラインにおけるⅠA、ⅠBの勧告の多くは、エビデンスレベルがⅢであり、レベルⅠ(ランダム化比較試験から得たエビデンス)のエビデンスによるものはまれである。しかし、ガイドライン作成委員会はエビデンスに基づいた再評価をし、その結果を基に改訂していると述べている。

SHEAガイドラインを推奨する立場で、Jarvis医師もガイドラインがエビデンスに基づいており、検査培養にかかる費用は、多剤耐性菌感染患者の治療に要する費用で相殺されてしまうであろうと述べている。HICPACガイドラインを支持するScheckler医師は、臨機応変な対応により、感染の伝播およびコストを最小化できると述べ、SHEAガイドラインを支持するランダム化比較試験の不足を指摘している。それに対し、Jarvis医師は、積極的な検査培養や接触予防措置、手指衛生などの履行には、ランダム化比較試験は必要とせず、HICPACガイドラインが推奨する臨床培養は、積極的な検査培養に比し大多数のMRSAあるいはVRE保菌患者の同定には不十分であると非難している。しかし、それに対し、Scheckler医師は、入院患者の背景は多様で、多様な需要をもたらすが、積極的な検査培養によってもたらされるであろう利益は、その費用を正当化するには不十分である、と指摘している。  

(訳:杉浦里加、木津純子)

Carlisle Vol.10 No.2 p8-11 Summer 2005

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