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Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Vol.10 No.3 Autumn 2005

鳥インフルエンザA(H5N1)のヒトからヒトへの感染の可能性

Ungchusak K., Auewarakul P., Dowell SF., et al.
Probable Person-to-Person Transmission of Avian InfluenzaA(H5N1).
N. Engl. J. Med., 352:333-340, 2005.

 2004年、高病原性鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルスにより、アジア8ヵ国で鳥インフルエンザが発生し、少なくとも44名が感染し、32名が死亡した。患者の多くは家禽に直に接触していた。ヒトからヒトへの伝播を示すエビデンスは未だ報告されていない。今回、タイの鳥インフルエンザAウイルスに感染した家族について調査し、ヒトからヒトへの伝播の可能性について調査した。

 患者とその母親、伯母の3名について、家禽や他の患者に接触した時期や状況について調査した。専門家チームは生存者を隔離・治療し、村の周辺に生き残った家禽を処分した。感染家族から得た検体を、ウイルス培養法、マイクロ中和抗体血清分析法、免疫組織検査、RT-PCR分析、遺伝子配列決定法により調べた。

 患者は死亡した鶏に接触してから、3、4日後に発症した。彼女の母親は、看病のために遠くから来院し、家禽には接触していないが、無防備のまま16~18時間看病し、肺炎で死亡した。伯母も無防備で患者を看病し、母親が発熱した5日後に発熱し、その7日後に肺炎を発症した。母親の剖検組織および伯母の咽頭スワブは、RT-PCRでインフルエンザA(H5N1)陽性であり、鼻咽腔スワブは弱陽性であった。それ以外の伝播は確認できず、ウイルス遺伝子の配列を決定すると、赤血球凝集素の受容体結合部位の変化やウイルスのその他の特徴は見られなかった。配列は8つのウイルス遺伝子断片のすべてにおいて、タイで鳥から分離された別のH5N1ウイルス配列と類似していた。

 母親と伯母の発症は、おそらく患者の危篤状態に無防備で看病したときに、この致死的な鳥インフルエンザウイルスがヒトからヒトへと伝播したことに由来すると考えられる。

 1997年の鳥インフルエンザH5N1ウイルス出現以来、ウイルスは多くの再集合を経て、いくつもの遺伝子型を出現させるという結果になった。現在、一般的に広がっているgenotype Zウイルスにおける赤血球凝集素やノイラミニダーゼ遺伝子の配列は、1997年のウイルスとは明らかに異なっている。この発見は、ウイルスは感染者の体内で、再集合によりヒトインフルエンザウイルスからの遺伝的物質を得るか、もしくは受容体結合部位に順応することにより能力を高めている可能性を暗示している。赤血球凝集素遺伝子のアミノ酸が1つ置換することで、受容体結合が、ヒトに特徴的な結合から、鳥に特徴的な結合に変化したことが示唆される。

 この世界で最も致死的なヒト病原体の一つである鳥インフルエンザウイルスのヒトからヒトへの伝播は、今後のインフルエンザ流行に対し、緊急に準備する必要性を示している

(訳:渡辺 静、木津純子)

Carlisle Vol.10 No.3 p8-11 Autumn 2005

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