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Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Vol.10 No.4 Winter 2005

3つの地域におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症

Fridkin, S.K., Hageman, J.C., Morrison, M., et al.
Methicillin-Resistant Staphylococcus aureus Disease in Three Communities.
N. Engl. J. Med., 352:1436-1444, 2005.

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は、1960年代に病院感染の原因菌として確認されたものである。しかしながら、近年、確立された感染の危険因子をもたない患者における発生が報告され、市中感染型MRSAと呼ばれている。この新たに発生した感染症が、アメリカ国民にもたらした負担、臨床の影響については明らかとされていない。今回、アメリカの3つの地域において、市中感染型MRSA感染の発生数、人種差、抗菌薬の感受性、臨床結果について検討した。

ボルティモア(調査期間12カ月)とアトランタ(18カ月)における地域住民をベースにしたサーベイランスと、ミネソタ(24カ月)の12カ所の病院における病院検査室をベースにした定点サーベイランスで患者を同定し、MRSA感染について評価した。情報は診療録の再調査および電話インタビューより得、調査地域において確立された危険因子がない患者において発生したものを市中感染型MRSA感染と分類した。

2001~02年に市中感染型MRSA感染が1,647例報告され、MRSA分離株全体の8~20%を占めた。感染症の年間発生数は地域によって異なり(アトランタで人口10万人当たり25.7例、ボルティモアで18.0例)、2歳未満の小児は2歳以上の小児および成人よりも有意に高く(相対リスク1.51、95%信頼区間1.19-1.92)、アトランタでは黒人は白人より有意に高かった(年齢補正相対リスク2.74、95%信頼区間2.44-3.07)。感染例の6%は侵襲性であり、77%において皮膚や軟部組織に感染がみられた。MRSA感染株の73%は処方された抗菌薬に耐性を示した。初期治療で切開と排膿を行った患者においては、有効な薬物治療が行われたかどうかで、臨床結果に違いが見られた。また市中感染型MRSA感染の潜在的な危険因子として、過去の医療機関訪問歴や寝室に2人以上が寝ているような家庭環境などが認められた。全体では、23%の患者がMRSA感染により入院した。

市中感染型MRSA感染は現在頻繁にみられ、深刻な問題となっている。とくに小児では、皮膚に感染がみられることが多く、入院する例も多い。この感染症による臨床的混乱を避けるには、医師は市中で起きた黄色ブドウ球菌感染と疑われる患者に対して、可能性菌としてMRSAを考慮すべきであり、適切な抗菌薬による治療が必要である。

(訳:塚本晶子、木津純子)

Carlisle Vol.10 No.4 p8-10 Winter 2005

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