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Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Vol.13 No.2 Summer 2008

高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1)の塩素処理による不活化

Rice EW, Adcock NJ, Sivaganesan M, et al.
Chlorine Inactivation of Highly Pathogenic Avian Influenza Virus (H5N1).
Emerg Infect Dis 2007;13(10):1568-1570.

高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)ウイルスH5N1株による公衆衛生上の懸念が増大し、環境中のウイルスの制御方法に強い関心が集まり、WHOも水中のH5N1株の不活化法の有効性について、さらなる情報を求めている。塩素処理は最も一般的な水の消毒方法であるが、水中のウイルス不活化に関する論文のほとんどは腸内ウイルスを対象としており、政府のガイドラインも腸内ウイルスに焦点を当てたものである。一般に、インフルエンザウイルスは脂質エンベロープ膜を有することから、塩素処理に感受性があるだろうと言われているが、鳥インフルエンザH5N1株への塩素処理の効果について検討した報告はない。

本研究には、クレード2に属する2種類のHPAI(H5N1)株、すなわち家禽から分離されたA/chicken/Hong Kong/ D-0947/2006株と、野生の白鳥から分離されたA/WooperSwan/Mongolia/ 244/2005株をSPFレグホンの発育鶏卵で増殖し、ウイルスを含む尿膜腔液を回収して用いた。不活化実験では、尿膜腔液が初期塩素要求量を満たした後の初期塩素濃度を、残留塩素が通常の飲料水中の残留塩素濃度となるように設定した。ウイルスに感染した尿膜腔液を塩素要求量がゼロのリン酸緩衝液(0.05M、pH7.0および8)で1:1000に希釈し、ウイルスと緩衝液だけを含む反応液を塩素処理前のウイルス価決定のコントロールとし、チオ硫酸ナトリウム(10%w/v)0.1mLで中和される塩素濃度を測定した。また、ウイルスも塩素も含まない緩衝液をネガティブコントロールとした。同ウイルスは室温で急速に不活化されるため、実験は5℃で行った。ウイルス価は50%組織培養感染濃度(TCID50)/mLで表示し、不活化レベルはTCID50/mLの常用対数変換値(Log10 TCID50/mL)をコントロールと塩素処理した検体との間で比較し決定した。

本試験の結果から、鳥インフルエンザウイルスH5N1は、塩素処理により容易に不活化されることが確認された。ウイルス接種物の初期塩素要求量は少なくなかったが、遊離残留塩素濃度(0.52~1.08mg/L)を維持すれば、ウイルスを3桁以上不活化するには1分以内の塩素曝露で十分であることが確認された。ウイルスが糞便中に含まれる場合は塩素要求量の増大が予測されるが、試験結果より、初期塩素要求量が補償されれば、比較的低い遊離塩素濃度で短時間塩素処理することでウイルスは十分不活化されることが示唆された。

(訳:寺島朝子,木津純子)

Carlisle Vol.13 No.2 p13-15 Summer 2008

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