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Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Vol.13 No.3 Autumn 2008

MRSAが生存する環境管理の重要性─病院清掃の例

Stephanie JD
Importance of the environment in meticillin-resistant Staphylococcus aureus acquisition:the case for hospital cleaning.
Lancet Infect Dis 2008;8:101-113.

イギリスにおいてMRSA保菌者に関連した病院清掃の重要性を議論しているが、科学的根拠が少ない。病院清掃は常に視覚で評価され、細菌学的リスクと相関していない。このレビューは、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(コ陰性ブ菌)の疫学と伝播様式について、伝播サイクルの各構成が清掃インパクトとの関連を確認したものである。ブドウ球菌伝播サイクルは、人-人と人-環境の間で直接伝播し、もっとも一般的なのはコ陰性ブ菌であり、これは環境中に認められる。臨床的には黄色ブドウ球菌(黄ブ菌)が問題となり、これは人の鼻前庭が保菌部位となっており、30%の人が一過性の保菌者であるが、手指を介していろいろな部位に伝播される。環境に存在する黄ブ菌の研究では、環境から分離された株と患者から得た株のジェノタイプが同一であることや、ベッドメイキング後にMRSAが15分以上浮遊している報告があり、これらの環境から感染する可能性もある。また、ある研究では、病院の埃の中に混在したMRSAは1年以上生存しており、だれでもこの環境から保菌者となることを示している。

病院清掃の研究では、洗浄剤やスチームで病棟を清掃しても、環境からMRSAを除去することはできず、病院がMRSAの貯蔵となって患者に対して有意な感染リスクとなることが述べられている。病院の備品の多様性(キーボード、ドアノブ、止血帯、聴診器、装具パッケージなど)により黄ブ菌やMRSAによる汚染の危険性が高く、手指で触れることができるこれらの多くの器具は、MRSAなどの汚染原因と考えられる。常習的な保菌者は、手指の接触によってMRSAを他の人や環境部位へ伝播を助長する。医療スタッフの手指汚染の研究では、隔離室で働く看護師の15%は手指に1万個の黄ブ菌を持っており、他の研究では、菌数が少なくても易感染患者へ伝播すれば初期感染が成立すると報告している。

環境のMRSAを減少させるためにさまざまな方法が検討され、空気感染対策としては、高性能エアーフィルターや定期的な病院清掃などがある。しかし、基本清掃の時間を2倍にしても病院感染の防止効果はなく、共有する医療備品や定期清掃の責任分担、そして吸引清掃による埃の除去が重要である。

(訳:白石 正)

Carlisle Vol.13 No.3 p12-14 Autumn 2008

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