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Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Vol.13 No.3 Autumn 2008

胸部術後の手術部位感染症がもたらす入院医療費の増大

Olsen MA, Chu-Ongsakul S, Brandt KE, et al.
Hospital-Associated Costs Due to Surgical Site Infection After Breast Surgery.
Arch Surg 2008;143(1):53-60.

1992年から2004年までに米国CDCへ報告された乳房切除術後における手術部位感染症(Surgical Site Infection:SSI)発症率は1.98%であった。一方、これまで個別に報告されてきたSSI発症率は1~28%と幅があり、CDCの報告に比べ高率である上に、本来衛生的であるはずの手術への期待を大きく裏切る高頻度となっている。また、感染制御対策に対する経済効果を算出することは、SSIによる国の財政圧迫という経済的な観点からも重要である。しかし、SSIに関連した費用についての研究は、これまで多数報告されているものの、費用の規模については明らかになっていないのが現状である。また、これまでの研究ではSSI発症率に関連する因子の手術部位や手術の種類、対象患者なども曖昧であった。そこで本研究では、乳房切除と乳房再建術後のSSIを対象とし、より正確な入院医療費の算出を行った。

調査は乳房切除術または乳房再建術(ICD-9分類)を受けた患者949名を対象とし、後ろ向きコホート研究で行った。その結果、術後1年以内にSSIを発症した患者は、全体で50名(5.3%)であり、乳房切除術に続いて乳房再建術を施行した(一期再建)患者では12.4%、腹直筋皮弁を用いた一期再建患者では6.2%、乳房切除術のみを施行した患者では4.4%、乳房縮小形成術を施行した患者では1.1%であった。粗入院治療費(手術費および術後1年以内の入院治療費)は、SSI発症患者において有意に高く(SSI発症患者$16,882、SSI非発症患者$6,123)、粗入院日数においても有意に長い結果であった(p<0.001)。また粗入院治療費を手術の種類や乳癌の病期等の関連因子で補正した入院医療費は$4,091であった(95%信頼区間2,839-5,533$(レートは2004年))。

本研究において、特に乳がん手術後のSSI発症率は、乳がん以外の術後SSI発症率に比して高率であり、衛生的な手術に対する期待を裏切る高頻度であることが確認された。また、SSIにかかる費用も含めた術後経過を知ることは、感染症が術後の患者に及ぼす影響を考える上で重要である。さらに、SSIがもたらす費用を考慮することは、感染リスク減少を目標とした感染制御対策の是非を問う上で、有用である。

(訳:橋倉万由子,木津純子)

Carlisle Vol.13 No.3 p12-14 Autumn 2008

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