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Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Vol.13 No.3 Autumn 2008

医療機関における耐性菌感染に起因する費用-経済理論と経済効果

Scott RD, Roberts RR
The Attributable Costs of Resistant Infections in Hospital Settings:Economic Theory and Application.
Infectious disease and therapy series. 2008;48:1-24.  

医療機関や市中での耐性菌出現を受けて、WHOや米国CDC等ではさまざまな取り組みが続けられているが、耐性菌出現が健康や経済に及ぼす影響の規模については、未だ明らかにされていない。さらに、医師も抗菌薬使用による治療効果と、それに呼応して増加する耐性菌出現との板挟み状態にあり、抗菌薬の使用は重大な課題となっている。また、耐性菌感染の多くが病院内における感染であることも重要な点である。そこで本調査では病院感染に限定し、耐性菌感染に起因する医療費増加について検討した。

その結果、病院感染による経済効果については数多く報告されており、感受性菌、耐性菌ともに患者が感染した場合、著しい費用増加を示すことで一致していた。しかしながら、各々の研究の背景である感染症の種類や患者像、比較対象などが異なるために、結果を統合して扱うことは困難であった。また、耐性菌感染症に起因する医療費増加については、MRSA感染患者では非感染患者に比して137~244%の医療費増加が報告されている一方で、疾患重篤度を考慮すると、わずか44%の増加であると報告されていたり、MSSA患者との比較では13~95%と幅広い費用増加が報告されていたりと、研究方法の違いによって医療費増加率に差が認められた。さらに、これらの調査のほとんどは1施設で行われたことや、医療費増加に相関する原疾患の重篤度指標についても統一的な運用がなされていないなどの問題があった。

最近の研究から、病院内の耐性菌感染症を減少させることによる医療費削減効果が示唆されており、感染症治療による経済効果を評価する上でも、より正確な医療費の算出が期待されている。それゆえ、今後の医療費調査では、これまでの不備を踏まえ、多施設試験の実施、耐性定義の決定、退院後の医療費も含めた医療費の算出が必要である。加えて、empiric therapyとしての抗菌薬使用の増加に伴う費用の算出や、入院日数と院内感染リスクの関連の評価についても今後の研究が期待される。また、耐性菌感染に寄与する原疾患の重篤度指標などを統一することで、耐性菌感染に関与する経済的な情報の質を向上させることができると考える。

(訳:橋倉万由子、木津純子)

Carlisle Vol.13 No.3 p12-14 Autumn 2008

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