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Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Vol.13 No.4 Winter 2009

手術患者を対象としたMRSAの入院時大規模スクリーニング試験と病院感染に関する検討

Universal Screening for Methicillin-Resistant Staphylococcus aureusat Hospital Admission and Nosocomial Infection in Surgical Patients.
JAMA 2008;299(10):1149-1157.

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)による病院感染の減少を目的として、入院時MRSA大規模スクリーニングの必要性が、専門家らによって国内外で謳われているが、それに関する大規模比較試験はいまだ行われていない。そこで本研究は、手術を目的として入院した患者に対し、MRSA早期検出が病院感染の発症率減少に及ぼす効果について検討した。

前向き介入コホート研究として、2004年7月~2006年5月までに、手術を受けるためにSwiss teaching hospitalの12診療科に入院した患者21,754名を対象とした。介入群(PCR法による入院時早期MRSAスクリーニングおよび状況に応じた標準的な感染制御対策の実施)とコントロール群(状況に応じた標準的な感染制御対策のみ)をクロスオーバーデザインにて比較した。

入院時スクリーニングは、介入群対象患者10,844名のうち10,193名(94%)に実施され、337名のキャリアを含む515名(5.1%)がMRSA陽性であると判明した。スクリーニング実施から結果通知までにかかる時間の中央値は22.5時間であった。院内でMRSA感染症を発症した患者は、介入群93名(1.11人/1,000人/日)、コントロール群76名(0.91人/ 1,000人/日)、発症比率は1.2(95%信頼区間0.85-1.69;p=0.29)であり、MRSAによる手術部位感染症の発症率および病院感染の発症率に著しい差は認められなかった。また介入群でMRSA感染症を発症した93名のうち53名(57%)は、入院時MRSA陰性であり、入院中にMRSAに感染した患者であった。

今回試験を実施した病院は他病院と比較して、MRSAによる感染症発症率自体が低いことや、緊急手術が多くスクリーニング結果を通知・利用するまでに時間がかかること等の制限があった。それらを考慮する必要はあるが、MRSA感染症発症率が比較的低い病院においては、手術患者を対象とした入院時早期MRSAスクリーニングは、MRSAによる病院感染の減少に寄与しないことが示唆された。

(訳:橋倉万由子、木津純子)

Carlisle Vol.13 No.4 p8-10 Winter 2009

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