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Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Vol.14 No.4 Winter 2010

医療従事者の手指衛生への取り組みが患者間のMRSA伝播に与える影響:
モンテカルロモデルを用いた分析

Beggs CB, Shepherd SJ, Kerr KG
How does healthcare worker hand hygiene behaviour impact upon the transmission of MRSA between patients?:an analysis using a Monte Carlo model.
BMC Infect Dis 2009, 9:64:1-9.

手指衛生の励行は、長年、医療関連感染(HAI:healthcare-associated infection)の予防において最も重要であるとされてきた。その結果、手指衛生のコンプライアンスを向上させるだけで、HAIの発生を大きく減少することができるという認識が広まるとともに、推奨レベル以上の手指衛生を行うことにより、それに比例したHAI減少効果が得られるという認識も広まってきた。しかしながら、一方で、手指衛生の効果に寄与するのはコンプライアンスの20%程度であるという説もあり、手指衛生コンプライアンス単独によってどの程度HAI減少率へ寄与できるかは疑問視されている。また、病棟での感染伝播に関連するデータが不足しているために、この分野の研究は遅れているのが現状である。

そこで本研究では、患者から医療従事者の手を媒介としたMRSAの感染伝播について把握するため、新しく確率的モンテカルロモデルを構築し、患者間のMRSA伝播に影響するさまざまな要因について検討した。また、本モデルを用いて、隣接したベッドを使用する患者間および4床病室内の患者間における感染伝播リスクを算出した。加えて、さまざまな状況下での感染伝播に寄与する因子についても調査した。

その結果、4床病室では、手指を介した感染伝播は一般的に低いことが判明した。一方、手指衛生コンプライアンスの向上は、感染伝播発生に大きく影響する因子である「ハイリスク要因の発生頻度」に劇的な影響を及ぼすことが明らかとなった。しかしながら、そのハイリスク要因の発生頻度については、手指衛生コンプライアンスの向上に従い、ある一定程度までは減少するものの、それ以上の効果は生じない傾向であることが認められた。

本研究より、手指衛生コンプライアンスについては、初期の取り組みにおいては優れた効果をもたらすが、さらに高レベルの手指衛生を行っても、必ずしも期待される効果は得られないことが示された。この結果は、多くの場合において、過度の手指衛生コンプライアンスを達成しても、相対的には小さな効果をもたらすのみである可能性を示唆している。

(訳:橋倉万由子、木津純子)

Carlisle Vol.14 No.4 p8-10 Winter 2010

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