長期間保管している21製品のN95型使い捨て式防塵マスクのろ過性能の評価
Evaluation of the filtration performance of 21 N95 filtering face piece respirators after prolonged storage.
Am J Infect Control 2009;37:381-386.
諸機関ではインフルエンザのパンデミックに備えるために、ある程度の量の使い捨て式防塵マスクを備蓄している。本研究では、長期間の保管に対する品質面への影響をより理解するために、米国国立労働安全衛生研究所(NIOSH)が認定したN95型使い捨て式防塵マスク(21製品)のろ過効率を評価した。これらのマスクは、元の包装の状態で6年間以上研究施設および倉庫施設で保管されたものであり、保管時の温度範囲は15~32℃、また、相対湿度の範囲は20~80%であった。
TSI Model 8130自動フィルターの試験機(TSI社製)を使用し、21種類の異なったモデルの63のN95型使い捨て式防塵マスクについて、フィルターの透過率およびフィルターの耐久性を試験した。塩化ナトリウムのエアロゾルを85L/分で使用するNIOSHのマスク認定試験の簡易法により、供試フィルターの透過率を測定した。多分散系の塩化ナトリウムエアロゾル負荷試験法は、最大透過値が得られるまで、TSI 8130自動フィルター試験機を使用し、実施した。
試験した21種類の製品マスクのうちの19製品は、初期透過率および最大透過率の平均値がいずれも5%未満であった。なお、初期透過率の平均値の範囲は0.39~5.83%、最大透過率の平均値の範囲は0.95~5.83%であった。初期および最大透過の標準偏差の範囲は、0.02~1.95%および0.02~1.97%であった。なお、保管期間とろ過試験不合格の製品との間に相関性はなかった。興味深いことに、平均初期透過率は21製品の防塵マスクのうちの8製品(38%)で等しかった。ゆえに、初期透過は200mgの塩化ナトリウムエアロゾルを使用した、より複雑で時間のかかる最大通過率試験を行うことなしに、保管したマスクの初期透過率を評価するのに使用できることが判明した。
結論として、今回の試験結果から倉庫施設内および研究施設室での保管条件で最長10年間保管されたN95型使い捨て式防塵マスクの大部分は、有効なろ過性能を有する可能性が高く、また、ろ過効率の低下の程度は製品に固有のものであり、製品の品質にあまり影響しないものと考えられた。
(訳:坂上吉一)
Carlisle Vol.14 No.4 p8-10 Winter 2010