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Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Vol.15 No.2 Summer 2010

集中治療室でのメチシリン耐性黄色ブドウ球菌伝播防止を目的としたクロルヘキシジンによる除菌戦略の有効性と限界

Batra R, Cooper BS, Whiteley C, et al.
Efficacy and Limitation of a Chlorhexidine-Based Decolonization Strategy in Preventing Transmission of Methicillin-Resistant Staphylococcus aureus in an Intensive Care Unit.
Clin Infect Dis 2010;50:210-217.

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の伝播防止プログラムの一つとして、クロルヘキシジンなどの環境表面消毒剤の使用が増えているが、効果に関するエビデンスは少なく、耐性菌発現の可能性も指摘されている。そこで本稿では、地域特異的に流行しているMRSAおよびアウトブレイク株MRSA sequence type 239(以下TW)の伝播防止に対するクロルヘキシジン消毒の消毒効果について検討した。

15床の集中治療室2室で発生したMRSA感染に関する区分時系列データについて、区分回帰モデルを用いて推計モデル平均罹患率比を求め、教育活動、コホーティング、TWおよび非TW MRSA株の伝播に対するクロルヘキシジンを基本とした消毒の有効性について解析した。また、代表的なTWおよび非TW MRSA株について、qacA/B遺伝子の保有と消毒薬に対する感受性を評価した。

その結果、クロルヘキシジン消毒により、非TW MRSA株による感染はきわめて有意かつ速やかに70%減少(推定モデル平均発生率比0.3、95%信頼区間0.19-0.47)したが、TW MRSA株感染は増加した(推定モデル平均発生率比3.85、95%信頼区間0.80-18.59)。また、その他の介入がMRSA伝播に及ぼす影響に関しては、弱い影響が認められるのみであった。クロルヘキシジン耐性遺伝子qacA/Bは、すべてのTW MRSA株(単離した21株中21株)で保有されていることが確認されたが、非TW MRSA株では5%未満(単離した21株中1株)であった。また、in vitroでのTW MRSA株に対するクロルヘキシジン最小殺菌濃度は、非TW MRSA株の3倍であり、in vitroでは非TW MRSA患者でのみクロルヘキシジン処置による保菌の減少がみられた。

以上より、クロルヘキシジンを基準とした環境消毒は、集中治療室でのMRSA伝播を防止することが確認された。しかし、qacA/B保有のMRSA株に対しては、クロルヘキシジンの消毒効果が認められないことから、急速に拡散する可能性が示唆された。

(訳:橋倉万由子、木津純子)

Carlisle Vol.15 No.2 p8-10 Summer 2010

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