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Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Vol.15 No.4 Winter 2011

救急隊員のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌への曝露

Sexton JD, and Reynolds KA
Exposure of emergency medical responders to methicillin-resistant Staphylococcus aureus.
Am J Infect Control 2010;38:368-373.

黄色ブドウ球菌はアメリカ合衆国の人口の32%(約89.4百万人の人々)の鼻腔中および表皮上で分離される。黄色ブドウ球菌はマイナーな皮膚感染(瘍、毛嚢炎および小包炎)から生活を脅かす肺炎、敗血症および死亡までの状態となり得る院内(病院)感染起因菌である。米国ではメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症による死亡が年間19,000人に上っている。疫学研究からは、市中感染症が急激に増加していること、および入院患者からの市中感染型の菌株検出が増加していることが示されている。救急隊員は、市中感染MRSA患者と病院感染MRSA患者の両方の曝露を受けるため、消防署内で共同生活をしていることと併せて、曝露リスクが高い。本研究では救急隊員が使用する消防署、研修施設、およびオフィスの環境表面のMRSA検出率・頻度およびその他の細菌指標を測定した。

救急隊員の使用施設で接触頻度が高い環境表面から、柄付きスポンジを用いて標的とする細菌を採取した。分離株が黄色ブドウ球菌であることは生化学検査で同定し、MRSAの同定は選択・鑑別培地での増殖により実施した。
なお、本研究は2期に分けて実施した。第1期の試験では、頻繁に接触する9ヵ所の消防関連施設から採取した500検体により、曝露量が大きい箇所を特定した。一方、第2期の試験では、第1期の試験でMRSAが陽性であった箇所(160ヵ所)から反復採取した。オフィスの表面、長椅子、テレビ/ステレオのリモコン、テーブルおよび台所の表面を含めた2ヵ所の消防関連施設の5つの場所であった。

サンプル採取箇所のうちの10.6%(160ヵ所中17ヵ所)から黄色ブドウ球菌が分離・検出された。長椅子と教室の机の汚染率は20%で、最も高かった(それぞれ20ヵ所中4ヵ所、10ヵ所中2ヵ所であった)。分離された黄色ブドウ球菌株のうちの64.7%(17株中11株)がMRSAであった。

救急隊員はMRSAに曝露される可能性が高い。この点は患者や病院での接触だけの要因ではなく、消防署内の環境による可能性も否定できない。MRSAは長椅子と教室の机で最も多く検出された。このような業務上の曝露が健康に及ぼす実質的な影響は不明ではあるが、MRSA曝露を減らすためには、日常的な手洗いや表面消毒などの感染管理実践の改善が必要である。

(訳:坂上吉一)

Carlisle Vol.15 No.4 p8-10 Winter 2011

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