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Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Vol.16 No.2 Summer 2011

術野の皮膚消毒

Garcia R
Surgical Skin Antisepsis.
Perioperative Nursing Clinics 2010;5:457-477.

皮膚消毒は標準的処置であり、特に手術患者ではガイドラインで術前の消毒剤使用が推奨されている。クロルヘキシジン(CHG)はアルコール、ヨウ素剤に比べ、持続性を有し、血液等の有機物存在下でも活性があり、多くの試験で細菌感染を減少することが報告されている。しかし、術前のCHGシャワーにより皮膚細菌コロニー数が1/9に減少することは報告されているが、手術部位感染(SSI)率の有意な減少は報告されていない。この原因として、Edmistonらは術前の入浴/シャワーの過程でCHGが皮膚から洗い流されると考えた。そこで、3群(第1群:術前夜消毒、第2群:術日朝消毒、第3群:術前夜と術日朝に消毒、1群20人)で、CHG皮膚残留試験を行った。各群とも、A期は全身に4%CHG含有石けん使用後、手、足、腹部に再度使用し、2分後洗浄。B期は石けん・水洗後、手、足、腹部を2%CHG含有布で消毒し、洗浄は行わなかった。皮膚に残留したCHG濃度はA期、B期とも1群から3群へと高くなり、B期が有意にA期より高かった(第3群のA期101.4-149.6ppm、B期1484.6-2031.3ppm)。CHG残存濃度は、A期ではブドウ球菌のMIC90の5倍以上(第1群5.1倍、第3群26.6倍以上)、B期では第1群90.2倍、第3群363.7倍と高かった。CHG消毒後、洗浄を行わないことにより、皮膚のCHG残留が多いことが認められた。

また、術野の皮膚消毒において、Berryらは10%ポビドンヨード(PVI)アルコール液と0.5%CHGアルコール液でSSI率を比較した。SSI率はCHG群4.1%(195人中8人)とPVI群15.9%(176人中28人)より有意に少なかった。Ellenhornらは、術野に0.75%PVIスクラブと1%PVI塗布併用群と1%PVI塗布群でSSI率を比較したところ、単独群(SSI 34人中8人)で併用群(36人中4人)よりSSI率は2倍多かった。Darouicheらは2%CHG・70%アルコール液と10%PVI液でSSI率を比較した。SSI率はCHG・アルコール群9.5%(409人中39人)とPVI群16.1%(440人中71人)に比べ、有意に低かったが、敗血症発症率等では有意差は認められなかった。これらより、術野の皮膚消毒では、CHGアルコールがPVIよりSSIを低下することが示唆された。

周術期患者は多剤耐性菌を含む細菌感染の危険性が高く、皮膚の除菌も重要となる。Vernonらは、ICUにおいて患者、医療従事者、環境のVRE(バンコマイシン耐性腸球菌)獲得試験を行った。患者の入浴法を、第1期:石けんと水洗(4カ月)、第2期:2%CHG含有布単回使い捨て(5カ月)、第3期:CHGを含有していない布の単回使用(5カ月)とした。患者、医療従事者、環境とも、VRE獲得率は第1期と第3期では有意差がなかったが、第2期では有意に低かった。また、BleadsdaleらはICUにおいて2%CHG含有布と石けん・水洗時の感染率を比較したところ、CHG群で中心静脈カテーテル関連血流感染症が有意に低かった。ClimoらはICUにおいて石けん・水洗時と4%CHG温水使用時の耐性菌獲得率を比較した。MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)獲得率は、4%CHG使用時1.93%と石けん・水洗時の2.59%に比較し25%減少し、VRE獲得率も45%減少し、VRE敗血症は78%減少した。

(訳:豊口禎子)

Carlisle Vol.16 No.2 p7-9 Summer 2011

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