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Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Vol.16 No.2 Summer 2011

多施設前向き研究による標準的な手指衛生手技に対する皮膚忍容性の評価

Chamorey E, Marcy PY, Dandine M, et al.
A prospective multicenter study evaluating skin tolerance to standard hand hygiene techniques.
Am J Infect Control 2011;39:6-13.

手指衛生は、微生物の交叉感染予防に有効であることから、最良の医療を提供する上で最も重要な取り組みとして推奨されている。手指衛生には、①石けんと水による標準的な手洗い、②擦式アルコール製剤(ABHR:Alcohol-based hand rub)を使用した手指消毒が頻用される。微生物学的な効果の比較においては、ABHRを使用した消毒の方が有効であることは明らかであるが、未だABHRの皮膚へのダメージを懸念し、使用をためらう人がいることが課題となっている。

そこで、本研究では、慣習的な石けんを使用した手洗いと、ABHRを使用した手指消毒の皮膚忍容性について比較検討するために、広範な職員を対象とした多施設前向き研究を行った。

9つの医療施設において、夏と冬に試験を実施し、標準的な手洗いおよびABHRを使用した手指消毒による手指の乾燥や刺激性を評価した。また、質問票を用い、さまざまな遺伝・環境要因(対象者の年齢・性別・クリーム剤や乳液等の保護剤使用の有無・体質的要因・外的要因・施設・職種・連続勤務日数)についても調査した。

その結果、1,932例が収集された。症例の分析により、石けんを用いた標準的な手洗いは、頻度が高くなるにつれ、皮膚の乾燥や刺激を引き起こすリスクが高まることが示された。一方で、ABHRを使用した手指消毒では、ABHRの使用頻度が増加しても、皮膚の乾燥や刺激への影響は変化しない、あるいは減少傾向であり、頻度依存的な皮膚機能悪化リスクの上昇はみられないことが示された。さらに興味深いことに、ABHRのみを高頻度で使用した場合(20回/日以上)、皮膚保護作用を示す可能性が示唆された。ただし、手指に傷がある職員ほど、アルコール製剤の刺激を嫌ってABHRの使用を避ける傾向が指摘されており、皮膚の状態が良好な職員の方がABHRを頻用している可能性があることにも留意が必要である。また、季節や体質的要因(アレルギーやアトピー等)による影響があることも確認された。

本研究の結果は、今後の手指衛生の普及・啓発に議論をもたらすとともに、擦式アルコール製剤使用の歯止めとなっているユーザーの抵抗感を払拭する強い根拠となるだろう。

(訳:寺島朝子、木津純子)

Carlisle Vol.16 No.2 p7-9 Summer 2011

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