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Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Vol.16 No.3 Autumn 2011

除菌は英国のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌伝播減少の主要因か? 集中治療室での検証

Edgeworth JD
Has decolonization played a central role in the decline in UK methicillin-resistant Staphylococcus aureus transmission? A focus on evidence from intensive care.
J Antimicrob Chemother 2011;66(Suppl. 2):ii41-ii47.

英国ではメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)菌血症サーベイランス制度導入により、ここ数年の間でMRSA感染および伝播が劇的に減少した。2008年には、2006年以前に比べてMRSA菌血症率は57%減少した。保健機関は基本的な感染制御の実践(手指衛生、接触感染予防、入院時のスクリーニング)を強化したが、急激な感染率減少には他の要因が寄与していることが示唆された。

集中治療室(ICU)はMRSA検出率が高く、病院内にMRSAを播種し、MRSA制御の最前線と考えられている。MRSA菌血症件数の減少はMRSA伝播件数の減少と密接に相関しており、手指消毒、接触感染予防、患者隔離等の対策によるものと思われる。さらにMRSA伝播を防ぐ方策として、消毒薬や抗菌薬による表面の除菌が行われている。最も繁用されている除菌剤は、ムピロシンとクロルヘキシジンである。特にクロルヘキシジンはICUにおいて除菌、血管カテーテル挿入部位の皮膚消毒、人工呼吸器患者の口腔咽頭部消毒等に用いられている。多くの試験でICUにおける除菌剤使用の有効性が報告されているが、エビデンスは不完全であり、プロスペクティブランダム化試験は行われていない。しかし、クロルヘキシジンは広く用いられている。

クロルヘキシジンの使用増加に伴い、耐性化が懸念される。英国のICUでの試験において、クロルヘキシジンを用いたプロトコールによるMRSA ST239-TW株(qacA/B遺伝子)の伝播防止失敗が報告されている。qacA/B遺伝子は、四級アンモニウム化合物やクロルヘキシジンのようなビグアナイドを含む消毒剤に耐性となる多剤排出ポンプをコードしている。qacA/B遺伝子は、英国のMRSA株の5%以下~10%に、ヨーロッパ株では60%に認められる。クロルヘキシジン耐性MRSAの蔓延は、患者の除菌効果や伝播防止に影響する可能性があるので、注意が必要となる。

(訳:豊口禎子)

Carlisle Vol.16 No.3 p8-10 Autumn 2011

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