Y's Square:病院感染、院内感染対策学術情報 > 感染対策学術情報 > 医療関連感染情報季刊誌より(Carlisle) > Review > 感染起因菌 > その他の細菌 > 複数種の多剤耐性グラム陰性菌の同時保菌
Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Vol.17 No.1 Spring 2012

複数種の多剤耐性グラム陰性菌の同時保菌

Snyder GM, O’Fallon E, D’Agata EMC
Co-colonization with multiple different species of multidrug-resistant gram-negative bacteria.
Am J Infect Control 2011;39:506-510.
 

多剤耐性グラム陰性菌による感染症は、高い罹患率や死亡率につながるが、近年、その発生頻度が増加し続けている。多剤耐性グラム陰性菌の獲得メカニズムには、患者間伝播によるものや、腸内でのグラム陰性菌種間の耐性遺伝子の伝達によるものが報告されており、外因的・内因的に複数の多剤耐性グラム陰性菌種を獲得するリスクがあることが示唆されている。複数種の多剤耐性グラム陰性菌を同時に保菌する際の特徴については、いまだ完全には解明されていないが、同時保菌率や同時保菌リスクが高い患者の特徴を明らかにすることは、多剤耐性グラム陰性菌の伝播抑制戦略において重要であると考えられる。

本研究では、多剤耐性グラム陰性菌の保菌率を明らかにするため、600床の長期ケア施設の入居者212名の直腸スワブを採取した。また、同時保菌リスクを増加させる因子を明らかにするため、複数種の多剤耐性グラム陰性菌の同時保菌者と単一種の多剤耐性グラム陰性菌の保菌者とを比較検討した。さらに、同時保菌に対する交差伝播の寄与を明らかにするため、分子疫学的解析を実施し、遺伝的に関連が認められる菌種の同定を行った。なお、本研究における同時保菌の定義は、2種以上の多剤耐性グラム陰性菌を保菌していることとした。

その結果、212名の入居者のうち53名(25%)において、1種以上の多剤耐性グラム陰性菌の保菌が確認され、そのうち11名(21%)は2種以上の多剤耐性グラム陰性菌を保菌していることが認められた。また、同時保菌への関連が認められた因子は、GDSスコア*5以上(認知症が進行しており、医療従事者による日常的な介助の必要性が高い)であり、同時保菌者11名ともにスコア5以上であった(p=0.05)。また、11名中7名において、遺伝的に関連性が認められる多剤耐性グラム陰性菌種の保菌が確認された。

以上より、複数種の多剤耐性グラム陰性菌の保菌率が高いことが認められた。また、多剤耐性グラム陰性菌の交差伝播は、同時保菌に寄与する主要な因子であることが示唆された。

*GDSスコア(Global Deterioration Scale):認知症の進行度を7段階で評価する手法

(訳:橋倉万由子、木津純子)

Carlisle Vol.17 No.1 p8-10 Spring 2012

関連サイト