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Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Vol.17 No.2 Summer 2012

日本の全寮制学校におけるPanton-Valentine Leukocidin陽性メチシリン耐性黄色ブドウ球菌の発生を制御する取り組み

Higashiyama M, Ito T, Han X, et al.
Trial to control an outbreak of Panton-Valentine leukocidin-positive methicillin-resistant Staphylococcus aureusat a boarding school in Japan.
Am J Infect Control 2011;39:858-865.

Panton-Valentine Leukocidin(PVL:白血球溶解酵素)を持つ市中感染型MRSAは、非常に強い毒性を有し、健常人においても重篤な感染症を引き起こすことが知られている。米国ではこれら強毒株によるアウトブレイクが数多く報告されてきたが、日本の市中感染型MRSA株は、PVL遺伝子を持たないものが一般的とされてきた。しかし、2006年10月から2008年4月に日本の病院で実施した後ろ向き調査では、全寮制学校に通う17名の健康な男子生徒で、ほぼ同じ抗微生物薬耐性を持つMRSAによる皮膚・軟部組織感染症(SSTI)が確認され、何らかの強毒性因子が関与した市中感染型MRSA伝播の可能性が示唆された。そこで、本研究では、MRSA株の遺伝的特徴やMRSA保菌率、閉鎖環境でのMRSA伝播抑制に関する調査を行った。

対象は、全寮制学校(生徒700名、教職員300名)に通う15~19歳の生徒とし、2008年5月から半年間の皮膚疾患の発生率や、高リスクとして選ばれた3群(1群:2006年10月~2008年4月に実施した上記調査で感染が確認された生徒17名、2群:1群の生徒が所属するラグビー・柔道・剣道部の生徒79名、3群:ブドウ球菌感染既往歴が疑われる新入生41名)の保菌率、スポーツ機器や浴室等の環境中の細菌調査などの生活環境の調査を行った。また、2008年11月以降、衛生手法の強化等を行い、感染制御導入によるMRSA保菌率等の変化を観察した。

その結果、21名の生徒に皮膚疾患が確認され、全員からMRSAが検出された。各群のMRSA保菌率は7.6%から36.6%であったが(1群18.2%、2群7.6%、3群36.6%)、感染制御の導入により、皮膚疾患発生率、MRSA保菌率ともに著しく減少した。また、遺伝子分析を行ったMRSA株47株中41株はPVL陽性SCC

mec

Ⅳc株であった。なお、米国の市中感染型MRSA株の多くは電気泳動によってUSA300型に分類されるが、本研究で検出された菌はUSA300型とは異なるものであった。

本研究は、国内初のPVL陽性市中感染型MRSAアウトブレイクに関する報告として、全寮制学校という閉鎖環境での調査を通して、伝播抑制への組織的な取り組みの意義を示すものである。

(訳:橋倉万由子、木津純子)

Carlisle Vol.17 No.2 p8-10 Summer 2012

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