3)トリクロサン12~14)
①特徴
トリクロサンは一般細菌に対する殺菌力に加えて、ブドウ球菌などグラム陽性菌に対する静菌力において優れた効力を持つ抗菌成分である。手指などの皮膚に適用した場合、良好な持続効果や累積効果を発揮する。日本においては0.3%含有製剤が薬用石けん(医薬部外品)として手指・皮膚の消毒に使用されているが、欧米においては0.3ないし2%含有洗浄剤が医療機関における衛生的手洗いや手術時手洗いなどに繁用されている。0.3%トリクロサン製剤の皮膚細菌叢に対する減菌効果は2%クロルヘキシジングルコン酸塩製剤よりも弱いと報告されているが、一方1%トリクロサン製剤のMRSAに対する効果は4%クロルヘキシジングルコン酸塩製剤よりも優れているとする報告もある12)。
②抗微生物スペクトル
グラム陽性菌、グラム陰性菌に有効である。グラム陰性菌に対するよりもグラム陽性菌に対する効力のほうが強い。真菌に対する効果は弱いと考えられ、ウイルスに関するデータは少ない。
③作用機序
細胞壁を破壊することにより殺菌作用を示すと思われる。
④適用範囲
0.3%トリクロサン液(界面活性剤を基剤に、医薬部外品の薬用石けんとして) |
手指 |
0.5%トリクロサン液(エタノールを基剤に、院内製剤例) |
手指 |
0.5%トリクロサン液(1/40mol/L NaOH液を溶剤に、院内製剤例) |
器具、物品 |
⑤主な副作用
過敏症があらわれることがある。
⑥その他の注意
- トリクロサンを廃棄処分する際の燃焼処理温度が低いとダイオキシンを生成する可能性があると懸念されている。
- 次亜塩素酸やジクロルイソシアヌール酸などに対しては不安定である。
- 紫外線や高温下に長く放置するとトリクロサンは変色するが分解はほとんどない。
▲TOPへ戻る