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Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Vol.18 No.1 Spring 2013

市中および実験的設定における手指と媒介物でのインフルエンザウイルスの生存

Mukherjee DV, Cohen B, Bovino ME, et al.
Survival of influenza virus on hands and fomites in community and laboratory settings.
Am J Infect Control 2012;40:590-594.

インフルエンザは2003年のH5N1や2009年のH1N1のように、重大な脅威となる可能性がある。接触感染によるウイルスの伝播には、手や媒介物でのウイルスの生存期間が影響する。今回、インフルエンザの接触感染を調べるため、手指や環境でのH1N1の生存力および生存期間を調査した。
インフルエンザ様症状のためコロンビア大学の学生健康部門を訪れた18~28歳の20人の学生(インフルエンザA迅速テスト陽性)を対象に、2009年9月~2010年2月に調査を行った。対象者の年齢、性別、症状、罹患期間等を調査し、同居者がいる場合は調査協力を依頼した。対象者は、片方のくぼませた手のひらに咳やくしゃみを激しく行い、他方の手の指先で30秒間汚れた手のひらをこすった。人差し指を直ちに拭き取り、培養とRT-PCR検査を行った。さらに、5分後に中指を、10分後に薬指を、30分後に小指を同様に検査した。
また、ドアノブ、電話器、枕カバーおよび新しい綿製のハンカチの4つの表面検査を行った。対象者は手に咳やくしゃみを行い、直接ドアノブや電話器をさわった。また、枕カバーやハンカチには直接咳やくしゃみをかけ、直ちにこれらの表面の検査を行った。
対象者20人は14~120時間症状を呈し、体温は36.6~38.8℃であった。RT-PCRでは4人の人差し指からH1N1が検出され、このうち3人では他の手指からは検出されなかったが、1人は5分後、30分後に検出された。他の1人はH1N1が5分後のみ検出された。H1N1は3人のドアノブからと、1人の電話器から検出された。しかし、枕カバーやハンカチからは検出されなかった。これらで培養陽性はなかった。5人の同居者は調査時症状がなかったが、1人からH1N1が検出された。
また、H1N1陽性の2人の鼻咽頭スワブのウイルス量は、2.94×108 TCID50*/mLと2.15×106 TCID50/mLであった。これらを希釈し、合成塗料、ビニール、ステンレス、枕カバー、顔組織、手に接種し、15、30、60分後にウイルス生存を検査した。培養検査では12、24、48時間後に検出できなかったが、ウイルスRNAはウイルス濃度が高いときに検出された。
今回の試験より、H1N1は咳やくしゃみといった汚染では、手や環境で長期間生存しないことが判明した。このときのウイルス濃度は<2.15×10~2.94×10 TCID50/mLと示唆された。
*TCID50:50% tissue culture infectious dose;50%組織培養感染量

(訳:豊口禎子)

Carlisle Vol.18 No.1 p8-10 Spring 2013

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